北海道・富良野が舞台のドラマ「北の国から」は、東京で挫折した男が子どもを連れて、故郷の廃屋で暮らす物語です。「電気がなかったら暮らせませんよッ」と不満を言う息子に「夜になったら眠るンです」と言う父親。今も鮮やかに記憶に残る場面です▼脚本家の倉本聰さんが亡くなりました。ドラマで描いた座標軸のブレない主人公は、自身の姿でもありました。戦後、「浪費は悪」という思想が「浪費は美徳」に取って代わられたのは「資本家たちの陰謀」だと喝破し、大量生産、大量廃棄の資本主義社会に警鐘を▼福島第1原発事故の後、何度も福島へ。人気のない町で道路を歩くのはイノシシや牛。ふるさとを奪った罪は、それに加担した政治家、財界人等が個人名を明らかにして負うべきだと主張しました▼憲法9条を守ることを訴え、安保法案にも反対。2016年のインタビューでは「僕はね、昔、作家仲間に右翼だって言われてたんですよ。ところがいつの間にか左翼だって言われるんです。僕は自分の座標軸の上をブレずに進んでいるつもりでも、世の中が変わると、こっちが曲がったと決めつけられるんです」と▼人間がよって立つべき真の座標軸とは。地球46億年の歴史を俯瞰(ふかん)し、あらゆることを海抜ゼロの原点から考え直すよう促しました▼臨界点を超えたかのような異常気象。AI暴走の危険。終わらない戦争。人類はどこに向かうのか―。遺言が、重く響きます。
2026年9月30日

