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2026年9月28日

熊本地震2カ月 被災者阻む手続きの壁

追加書類を何度も 行政から返事なく

自宅の公費解体・工房再開への補助 生活再建したいのに…

 熊本地震の発生から28日で2カ月となります。被災地では熊本県内8市町の避難所に1514人が避難(25日時点)。氷川(ひかわ)町と宇城(うき)市で仮設住宅の提供が始まる一方、避難所にとどまる被災者や自主避難中の被災者が多くいます。生活となりわい再建への課題を探りました。(田中正一郎)


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(地図)熊本県内で被災者が入所する避難所を開設する自治体

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 氷川町のAさん(67)は農作業の都合もあって避難所に行かず、全壊の判定を受けた自宅で寝泊まりしています。玄関のひさしは目線の高さまで落ちて傾き続け、家の中の壁が至る所で崩れています。

 避難所にいる家族に安全な住まいを確保したいと、仮設住宅や公費解体の申請をしていますが、「とにかく手続きが進まない」といいます。公費解体では何度も追加の書類を求められ、「車の運転ができないくらいへたり込み、自分でも分からない涙がポロポロ出てきた」と打ち明けました。

 染物業を営むBさん(68)は飼い犬と暮らすため避難所を出て、全壊判定を受けた工房兼住宅で暮らします。工房はコンクリートの床が30センチ以上盛り上がり、作業台は大きく傾いたまま。機械類も含め損害額は最低限でも3400万円ほどになるといいます。

 親類の空き倉庫での再建を目指すBさん。県の補助制度の活用を考えていますが行政の担当者からはっきりした返事がなく、仕事をできない焦りが募ります。「事業を長期間止めてお客が離れるのが命の次に恐ろしい」と早急な対応を求め、借り入れできない零細業者に返済不要の補助が必要ではないかと語りました。

 農業の被害も深刻です。用排水路が寸断する被害を受けた同町栫(かこい)地域でコメを栽培する男性(61)は、水田2ヘクタールの一部が水を張れないほど隆起。生育にも影響が出ており、「水不足で胴割れ(ヒビが入る)したコメを混ぜるわけにはいかず、破棄するしかない」と首を振ります。

 地域では川水を使う水田に数ヘクタールの規模で被害が広がっています。「昨年の水害に加え地震にまでやられた農家は悲鳴を上げている。離農がさらに加速するのでは」と心配します。

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(写真)倒壊した家屋=24日、熊本県八代市

八代 生活再建へ直接支援を

みなし仮設支援なし

 「“座って半畳、寝て1畳”の段ボールベッドがわが家かと思うと、悲しさを通り越してむなしい」。熊本地震で避難生活が長期化する中、八代市の避難所に発災当初から身を寄せる女性(86)は、日本共産党の橋本徳一郎市議の聞き取りに、こう打ち明けました。

 「一生使うつもりでエアコンやガスコンロを新しくしたばかりだった」という女性。県が民間住宅を借り上げて提供する「みなし仮設」の手続きを進め、鍵も受け取りましたが、家電などを自力で用意しなければなりません。公費負担での支援がなく、移り住むことができずにいます。

 ほかにも「友人の借りていた借家に住んでいて被害に遭ったが、罹災(りさい)証明は出ないということだった。少ない年金で仕事を探しているところなので困っている」(74歳女性)との相談がありました。

 八代市では28日から被災家屋の公費解体の申請が始まります。「つぶれた自宅は亡き祖父の名義で相続人の同意が必要と言われた。故人や連絡が取れない人が大勢いる」(82歳女性)と頭を抱える被災者も。

 橋本市議は「自宅の撤去や罹災証明は生活再建の第一歩、それなしに先には進めない。行政は門前払いにするのではなく被災者一人ひとりに寄り添った支援が必要だ」と指摘しました。

井戸水が止まり廃業

 水道普及率が52%にとどまる八代市。広域の断水は8月末までに解消しましたが、約4500戸で自主水源の井戸の濁り水や水枯れなどの被害が出ており、生活はもちろん営業にも深刻な影響を及ぼしています。

 市内で鉄板焼きの飲食店を営む女性(48)は、借りていた店舗の井戸水が出なくなり、5年間続けた店を閉じることに。「掘り直しをしても水が出る保証がなく、費用も分からない。頼もうにも業者がいない」

 八代民主商工会には、入居していたビルが被災し退去を迫られ廃業した飲食店などから相談が寄せられています。中村悠一事務局長は「県の直接支援制度の利用は、ある程度の事業規模がないと厳しい。コロナ禍では給付の支援が多く、それで助かった事業者がいた。融資が中心の支援を改め、使いやすい直接支援で地域の事業をつないでいく必要がある」と語っています。