長年の介護報酬の抑制と引き下げが、介護職員の深刻な人手不足と介護事業所の経営難、倒産・廃業を招いています。訪問介護事業所ゼロの自治体数が高止まりし、介護が受けられなくなる事態です。
ところが高市早苗自維政権は報酬引き上げでそれを改善するのではなく、崩壊を追認して規制緩和を進め、全国一律給付という社会保険の原則を破壊しようとしています。
自維政権は先の国会で、高齢者人口が減少する地域などを「特定地域」とし、介護サービスの人員配置基準を緩和、在宅サービスを保険給付から外し、自治体による安上がりな地域支援事業に移行できる法改悪を行いました。自維だけでなく、中道、国民民主、立民、公明、参政、保守、みらいが賛成しました。
■自治体の6割影響
「特定地域」は、厚生労働省の基準に従い都道府県が指定します。来年4月実施に向け、厚労省は審議会に基準案を示し、市町村に指定への意向表明を求めます。
厚労省の基準案は、(1)過疎地域など特別地域加算・離島等相当サービスの対象地域(2)75歳以上の人口密度が1平方キロメートル当たり5人未満、または75歳以上人口が1千人未満かつ減少している地域(3)訪問介護など特定のサービス類型の事業所がない、または残りわずか、かつ、その事業所が廃止を検討している―です。
厚労省は、(1)と(2)の912自治体を公表しました(市町村の全域指定と一部指定を含む)。(3)の自治体は示していませんが、訪問介護事業所「ゼロ」または「残り1」の自治体は本紙調べで401(6月末)にのぼります。重複を除き1千以上の自治体が国の基準に該当し、全国の自治体の6割近くが「特定地域」指定の可能性があります。
「特定地域」に指定されると、事業所が、全国一律基準の保険サービスから「特定地域サービス」に切り替えることができ、施設や在宅サービスの人員配置基準が緩和されます。少ない人数で担うことになり職員はいっそう疲弊します。介護報酬は月ごとの「定額払い」になり、利用者によってはいまの「出来高払い」より割高になります。
■無資格で重度者も
さらに在宅サービスについては保険給付から外し自治体の地域支援事業の「特定地域居宅サービス事業」への移行が可能になります。同事業には職員の資格要件がなく、要介護5の重度者の在宅介護を無資格者が担うことにもなります。予算には上限がありサービスは頭打ちになります。
「特定地域」に指定されても制度上、現行の介護サービスは残ります。しかし担い手不足の下、ギリギリの体制で運営可能な「特定地域サービス」への切り替えが進む恐れがあります。社会保険でありながら地域格差が持ち込まれます。改悪は撤回すべきです。
介護報酬を引き上げ、全産業平均より月8万円低い介護職員の賃金を上げ、2024年に下げた訪問介護基本報酬を引き上げることこそ必要です。「特定地域」の指定を許さず、介護事業所への経営支援を国や自治体に求める運動が必要です。

