皇室典範の改定を受けて、皇族への中傷対策として事実上の不敬罪復活を求める動きが強まっています。戦前に逆戻りさせるかのような企ては看過できません。
不敬罪は戦前、天皇はじめ皇族への批判を刑罰で封じ、国民を統制したもので、戦後に廃止されました。
■国家権力が摘発へ
「皇室の尊厳を守る」をかかげた決起集会が7月、国会で開催され、皇族への中傷を許さない対応を求める決議を採択しました。「今後皇室に養子として入られる旧宮家の男系男子に対する激しい攻撃も予想される」などとし、「皇室の尊厳護持に向けた法整備を不断に考究すべき」だとしています。
この集会には、50人近い国会議員(自民、維新、国民、参政、保守、代理含む)が参加しています。
自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表・青山繁晴衆院議員)は同月、「皇室保護プロジェクトチーム」を設置、皇族に対する中傷対策として法整備の検討を始めています。高市早苗首相も同会メンバーで、昨年末には首相も会合に出席し、「護る会が支えてくれて今こうやって首相でいる」と謝意をのべています。
同会では、養子候補者が一般人の段階から中傷の対象になる可能性も議論され、青山代表は「議員立法をやるべきだ」とのべています。
保守党も8月に改定した重点政策項目で「皇族に対する名誉毀損(きそん)、侮辱を『親告罪』の例外とすべく刑法を改正」とかかげました。
現行では、名誉毀損は親告罪で被害者が告訴しなければ起訴できません。そこで検討しているのが、皇族については被害者の告訴を不要とし、国家権力が取り締まることを可能にする案です。
注目されるのは、皇室典範の改定を受け、養子候補になりうる旧宮家の男系男子も皇族と同じように保護対象に含めようとしていることです。準皇族扱いし、国民のなかに新たな身分を持ち込むもので、「門地による差別」を禁ずる憲法(第14条)に抵触します。週刊誌などの皇室報道も“不敬”とされかねません。
■社会に萎縮を生む
青山氏らは不敬罪の復活を否定しますが、皇族を特別に保護し、告訴なしで国家権力が処罰できるようになれば、名称はどうあれ、事実上の不敬罪復活と批判されて当然です。
各紙社説も「『皇室の尊厳を護る』という名目で、国民の権利を侵害するような事態を招いてはならない」(「毎日」)、「社会に萎縮を生み出す」(「信濃毎日」)と批判しています。
しかし高市政権は、これまでの国会での議論の到達を無視し、国民の総意とも、国会の総意とも違う皇室典範改定を数の横暴で押し通した政権です。議員立法という手法は、法案提出にあたり、内閣法制局による憲法や他の現行の法制との関係などの審査をさけた国旗損壊処罰法案や副首都法案と同じやり方です。
危険な動きを軽視できません。世論が監視し、警戒することが求められます。

