自転車を走らせていると、目の前を赤いものが通り過ぎました。赤とんぼでした。秋を感じさせる風物詩です▼学生時代、8月の初めに登った福島県の磐梯山でびっくりする光景に出合いました。秋に現れるはずの赤とんぼが、辺りの空間を埋め尽くしてしまうほど群れをなして飛んでいたのです▼赤とんぼの代表アキアカネは夏の初めに平地で羽化し、夏の盛りは暑さを避けて山で過ごし、涼しくなると平地に降りてくる―。だいぶ後で知りました▼国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の恐れのある野生生物をまとめたレッドリストは、世界で約6000種類いるトンボの約16%が絶滅の危機にあると指摘しています。日本も例外ではありません▼環境省のレッドリストでも、約180種いるトンボの16%が絶滅危惧種とされています。アキアカネはそれに含まれていませんが、一部地域では絶滅が心配されています。原因は、幼虫のヤゴがすむ水辺が開発などでなくなったり汚されたりしていることや、近年、使用量が急増したネオニコチノイドなどの農薬の影響が指摘されています▼童謡「赤とんぼ」を口ずさむと、一面黄色に色づいた田んぼが広がる秋の風景がうかんできます。とはいえ、トンボを守ることは単なる郷愁ではありません。トンボが生きられる自然環境を取り戻すことは、安心して暮らし続けられることでもある―そんな思いが頭を離れませんでした。きょうは秋分の日。
2026年9月23日

