特別国会で成立した改悪介護保険法では、高齢者人口の減少地域で、介護保険の施設・在宅サービスの人員配置基準を緩和したり、在宅サービスを保険給付から外し、自治体事業に置き換えることのできる「特定地域」が創設されました。同地域に指定される可能性のある自治体は1000を超え、全市区町村(1741)の6割近くになる見込みであることが、新たに分かりました。
自民党政府は長年介護報酬を低水準に抑制し、介護事業所を深刻な人手不足と経営難に陥れました。訪問介護事業所がゼロ・残り1の自治体が全国の2割を超える「介護崩壊」を引き起こしています。危機打開が急務なのに、高市政権は基準緩和によって現状を追認し、「全国一律」の保険給付の原則を切り崩そうとしているのです。
「特定地域」は、厚生労働省の基準に従い、都道府県が市町村の意向を踏まえて指定します。厚労省が審議会に示す指定基準案は以下の三つです。
(1)特別地域加算・離島等相当サービスの対象地域(市町村の全域指定と一部指定を含む)の894自治体、(2)「75歳以上人口密度が1キロ平方メートル当たり5人未満」または「75歳以上人口が1000人未満かつ減少」の地域((1)と重複しない全域指定は18市町村)、(3)訪問介護など特定のサービス類型の事業所が「ない」または「残りわずか、かつ当該事業所が廃止を検討している」地域。
厚労省は(3)の自治体を明らかにしていませんが、6月末時点で訪問介護事業所が「ゼロまたは1カ所」の自治体のうち、(1)(2)に含まれていない自治体だけでも101市町村に上ることが、日本共産党政策委員会の集計で明らかになりました。(1)~(3)のいずれかに該当する自治体は、1000を超えると見込まれます。
さらに厚労省は、基準(2)と(3)についても、自治体全域指定のほかに、「旧市町村単位、行政区単位、日常生活圏域単位を想定」しています。たとえば中学校区の「日常生活圏域」に介護事業所がなければ、その圏域を「特定地域」に指定することができ、同「地域」を抱える自治体はさらに拡大します。
「特定地域」に指定されれば、施設や在宅サービスの人員配置基準が緩く、介護報酬が定額制の「特定地域サービス」の提供が可能になります。在宅サービスを保険給付から外し、職員の資格要件や配置基準に規制がなく、事業費には上限がある自治体の地域支援事業(特定地域居宅サービス等事業)に置き換えることもできます。
自治体が「特定地域」に指定されても現行サービスは残りますが、職員不足や経営難が進めば、現行の保険給付がこれら脆弱(ぜいじゃく)なサービスに入れ替わっていく危険があります。

