(写真)浜岡原発。正面は事務棟。右手に1・2号機、中央奥に3・4号機、左手奥に5号機がある
中部電力は、浜岡原発3、4号機の再稼働に必要な原子力規制委員会への申請を自ら取り下げると発表をしました。審査データのねつ造は、原子力の最低限の安全性を確認するための審査の信頼性を根底から揺るがす行為であり、審査が成り立たない事態を招いた以上、当然の決定です。
調査委員会の報告書によると、断層モデルに基づく地震動評価では全225ケース中、208ケースで何らかの不適切な方法がとられていました。17ケースは残っている資料が不十分なため判断ができませんでした。
倫理観まひ
不正の実態をみると、地震動評価の担当が、検討すべき断層等の条件が厳しくなるたびに、自分たちに都合が悪い結果にならないよういろいろな小細工を施していることが分かります。不正を繰り返す中で、倫理観がまひしていったのではないでしょうか。
また、社内の専門家が問題を指摘する声や社内相談窓口への通報が複数ありながら、生かされなかったことも分かっています。一度は、審査資料の記載に問題があるという内部通報が当時の勝野哲社長(現・会長)に伝わりました。しかし、外部弁護士の意見を無視し、不正を続けていた原子力土建部の意見を採用するという不十分な対応となり、自浄作用は全く働きませんでした。
中部電では、今回の審査データのねつ造以外にも、浜岡原発の工事費用の未精算や廃炉工事費の不正請求、さらには電気代の過大請求など不祥事が続発。最近明らかになった事例に限ってもあきれるほどの事態です。
報告書は、中部電の一部グループや集団では「独自の合理性」や「独自の正義感」を特徴とする「独自の正当化理論」の存在が、今回の問題の根底にある原因だと指摘。さらに、同社内での「独自の正当化理論」などの特異な考えの広がりに言及し、中部電で「不祥事案件が今後も断続的に起き得るという懸念は払拭できない」とまで断じました。
反省口だけ
中部電のこれらの振る舞いは、危険な原発を運転する事業者としての適格性を全く欠いています。しかし、林欣吾社長は会見で「反省」を口にしながら、再申請に関して「諦めることなく」進めると繰り返しました。反省よりも再稼働のために申請を取り下げたとしか思えない態度です。
浜岡原発は南海トラフ地震の震源域直上に立地し、建設当初からその立地の妥当性を疑問視する声が専門家からも上がっていました。それらを無視して5号機まで建設をしてきた結果が、今回の不正の発生を招いたのではないでしょうか。中部電は、浜岡原発の再申請を断念し、早急に廃炉を決定すべきです。(松沼環)

