国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の公式サイトは11日、国連特別報告者や独立専門家、作業部会のメンバー40人以上による「25年間の世界の対テロ政策は人権を危険にさらしてきた」と題する共同の声明を発表しました。
声明は、各国政府によるテロ対策の名のもとで、人権や市民社会、民主主義、法の支配が「深刻に損なわれている」と指摘。国際法違反、侵略戦争、不法占領、戦争犯罪、ジェノサイド(集団殺害)、暗殺や拷問、弾圧、不公平な裁判などが繰り広げられてきたことを懸念しています。
その上で、「テロとのたたかいは、国際法の基本原則を限界を超えるほどゆがめてきた」と指摘。国家的暴力や外国の介入が過激組織ISの勢力拡大にみられるように、逆に「テロや治安悪化を助長してきた」と強調しました。
各国に向けて、国際法に則したテロ対策の抜本的な見直しと、テロ防止のためにも「紛争解決と平和構築、良好な統治と政治的包摂」などを重視するよう呼びかけました。
米非営利法律団体「憲法上の権利センター(CCR)」も9日に声明を発表。米同時テロ後、当時のブッシュ米政権(共和党)が「恐怖と苦しみを利用し無制限のテロとのたたかいを開始した。自らの意志を他国に押し付け、憲法の枠を超えて権力を拡大し、脆弱(ぜいじゃく)なコミュニティーを標的にする口実だった」と述べ、その後の民主党政権時でも継続されてきたことを批判しています。
声明は「こうした深刻な人権侵害の責任が問われていないため、トランプ米大統領は対テロを口実に、自らの権威主義的政策を進めることが可能となっている」と指摘。移民やトランプ政権の政策に反対する人々に「テロリストのレッテルを貼り付けている」と訴えました。
米女性平和団体「コードピンク」も9日の声明で、「テロとのたたかいは、米市民を守るものでは決してなかった。歯止めのない権力拡大、米国の帝国的影響力の拡張、地域の不安定化、戦争経済を肥大化させるために行われてきた」と強調。パレスチナ、キューバ、ベネズエラ、イランといった国々などに戦争を仕掛けるため、今日も同様の「政治的な手口を使い続けている」と非難しました。
また、引き続きテロとのたたかいによる被害についての国家的責任の追及と軍事優先の政策の転換を求めるとともに「犠牲となった人々を悼み、抵抗し続けてきた人々に敬意を表し、死ではなく命を大切にすることに力を注ぐ世界をつくる決意を新たにする」と表明しました。 (ワシントン=洞口昇幸)

