日本で初めて赤ちゃんポスト(2007年)と内密出産(21年)を熊本市の慈恵病院が実施して以来、現在3例目となる内密出産を、行政主導では初めて泉佐野市(大阪府)が具体化を進めています。
こうした動きを受け、法制化に向けた各党の動きが加速しています。政府は、7月の「骨太の方針」に「困難な状況にある妊産婦の支援」を初めて盛り込みました。
日本では子どもの虐待死の約半数が0歳児で、その約4割が生後1カ月未満で亡くなっています。加害者のほとんどが実母で多くは若年女性です。背景にはDVやレイプ、売買春や性風俗店での望まない妊娠、経済的な困窮、家族に援助を求められないなどから周囲に妊娠を隠し、医療機関未受診、相談先も知らないままの孤立出産があります。
■追い詰められ孤立
背景には、不十分な性教育、避妊の選択肢の少なさとアクセスの悪さ、高い中絶のハードルなどがあります。加えて男性の責任が問われないなど、望まない妊娠が女性を自死や嬰児(えいじ)殺にまで追い詰めています。
そうした緊急下にある妊産婦の最後のとりでとして、赤ちゃんポストや内密出産に医療機関が自主的に踏み出しているのが現状です。政府は22年9月に内密出産のガイドラインを発出したものの、子どもの出自を知る権利の保障や出産費用負担、子どもの養育など、医療機関や地方自治体まかせとなっています。
韓国では、▽09年から始まったベビーボックス(プロテスタント教会が設置)に15年間で2100人を超える子どもの預け入れがあったこと▽15~22年に出生届の出されていない子どもが2千人以上発生した「消えた赤ちゃん」―が社会問題となり、23年「危機妊婦保護出産法」が制定されています。
ヨーロッパでは、ドイツの「ベビークラッペ」など赤ちゃんポストや内密出産が広く容認されています。フランスでは、赤ちゃんポストや内密出産はないものの、公立・私立を問わず、医療機関で匿名出産ができる仕組みが確立しています。
■鍵は出自知る権利
これらの国々では、子どもの出自を知る権利を保障する制度も国が整備しています。
いま日本で赤ちゃんポストや内密出産の最大のハードルとなっているのが、子どもの出自を知る権利の保障です。国が情報の保存を義務付け責任を持って一元的に保存・管理することが欠かせません。併せて情報開示ルールの明確化が求められています。
政府は、「困難な状況にある妊産婦の支援」を「少子化」対策の一環として盛り込んでいます。しかし求められているのは、緊急下の妊産婦の受け皿の整備とともに、困難な妊産婦を生み出している日本の現状そのものを変えることです。
そのためには、基本的人権の保障と位置付ける必要があります。誰もが自分の体、性や生殖の十分な情報を得られ、自分の望むものを選んで決められる権利、必要な医療やケアを受けられる権利、「性と生殖に関する健康と権利」の保障が求められています。

