残業の監督・規制から支援・助長への労働行政の大転換です。厚生労働省は、残業を月45時間以内に減らすよう企業に一律に求めてきましたが、9月からは各事業場の事情に応じた指導に転換します。
労働基準法は労働時間の上限を原則1日8時間週40時間と定めます。しかし、労使が労基法第36条に基づいて残業協定(36協定)を結べば月45時間年360時間以内で残業をさせることができます。
さらに「繁忙」などの事情があれば特別条項を付けて月100時間未満年720時間まで上限を拡大できます。厚労省が認める過労死ラインの長時間労働です。そのため労基署は、特別条項があっても45時間以内に規制するように一律に指導・監督してきました。
36協定がなければ残業は一切できません。企業の約5割が36協定を結んでいます。
■時間外労働を指南
一律指導をやめるばかりか、47都道府県に36協定や特別条項締結を支援する「相談窓口」まで設置します。
「社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいして、なんら気にかけることはない」(『資本論』)のが資本の利潤第一主義です。
労使の力関係は圧倒的に労働者が不利です。だから世界の労働者は数世紀にわたる大闘争によって、命と健康、人間らしい生活を守るために、労使が対等の立場で交渉できる労働三権や、最低労働条件を定めた労基法、最低賃金法などさまざまな労働者保護法制、「社会による強制」手段を獲得してきたのです。
労基法第1条第2項は「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と定めています。労使の力関係の非対称性をふまえて、あえてくぎを刺したものです。
労働行政がやるべきは、労働法にもとづく労働者保護の促進であって、長時間労働促進への加担、法の精神の逸脱ではありません。
■命より財界を優先
ところが高市早苗首相は、労働時間規制の取り払いを求める財界に迎合し首相就任直後、真っ先に労働時間規制の緩和検討を厚労相に指示しました。財界の要求を受け、自民党の成長戦略本部が4月、一律の指導見直し、特別条項締結に向けた指導・助言を提言、日本成長戦略と「骨太の方針」にも盛り込まれました。
高市政権は、裁量労働制の拡大や、「労使自治」の名での残業規制除外など、長時間労働助長のための労働法制改悪をねらっています。今回の指導見直しは、その露払いにほかなりません。
2025年度の過労死・過労自殺の労災補償請求件数は518件と、前年の1・5倍に跳ね上がりました。財界追随による過労死促進、歴史の逆行を許してはなりません。
日本共産党は、賃上げ・労働条件改善と経済発展の好循環、「自由に使える時間」確保のための抜本的時短と残業規制強化の具体策を提案しています。ともにたたかうことを呼びかけます。

