将棋の第57期新人王戦(しんぶん赤旗主催)が、13日までに準々決勝が終わりベスト4が出そろいました。本紙将棋観戦記者の田中幸道さんに、4人の特徴や棋風、見どころについて寄稿してもらいました。
今期は実績十分の強豪が2人、そして伏兵2人がベスト4に進出しています。
藤本渚七段は出場者で唯一の七段、順位戦B級1組に在籍する優勝候補の筆頭です。通算勝率は7割5分を超え、順位戦は3期連続で昇級。第13期加古川青流戦で初優勝を飾り、本棋戦でも初出場の第54期に準優勝を果たしています。
居飛車党で圧倒的な終盤力を武器とする実戦派。中終盤にかけての鋭い踏み込みは、対戦相手にとっては脅威でしょう。
歴代優勝者の多くは後年タイトルを獲得し、一流棋士へと成長しています。若手のトップランナーと目されるからには何としても優勝を勝ち取りたいところ。今期はそのラストチャンスになります。
高田明浩五段も高勝率の棋士で、年度勝率は全年6割を超え、本棋戦では第55期に決勝に進出。4強は今期が3回目で、藤本七段を追う若手強豪の一人です。
居飛車一筋。中終盤の力強い指し回しと、薄い玉を巧みに操る玉さばきに定評があります。また、序盤に工夫を凝らす作戦家でもあり、矢倉、相掛かり、角換わりなど球種も豊富です。
藤本七段との一戦は互いに“今期こそ”の思いがぶつかり、激戦は必至。高田五段が序盤でリードを奪えるかがポイントになりそうです。
森本才跳四段は23年のプロ入りからこれまで目立った活躍はなく、いわばダークホース的な存在です。ただ今年度は一皮むけた感があり、途中8連勝を含む9勝4敗(8月14日時点)と白星が先行。本棋戦でも5回目の出場で初のベスト4進出を決めました。
その道中、優勝候補の一角と目される岡部怜央、上野裕寿両六段を破った星が光ります。2局とも得意の三間飛車を採用。いずれも苦戦に陥りましたが粘り強く耐え抜き、終盤、一瞬を捉えた勝負手が奏功し逆転に成功。4強の中では唯一の振り飛車党で、その粘着質の勝ち方には鍛え抜かれた職人技を感じます。初優勝を勝ち取り、飛躍への足掛かりをつかめるか。
永井大三段は初出場で未知数の存在ですが、限られた情報を分解すると、ただ者ではない姿が見えてきます。三段リーグは4期目になりますが初回に13勝5敗の好成績を挙げ、以降も11勝7敗、12勝6敗、7勝7敗(同)と続きます。
居飛車本格派とみられ、強豪古賀悠聖六段を破ったのは見事。堂々の勝利で、終盤の鋭い切れ味が印象的でした。他の3局も快勝し安定した勝ちっぷりで4強に食い込んでいます。
ただ振り飛車党とたたかうのは初めてで、森本四段戦は出たとこ勝負になるでしょう。粘土に鋭い刃が刺さるのか、中終盤の攻防に注目です。
(田中幸道)
【準決勝の日程】
■9月2日(水) 関西将棋会館
森本才跳四段 対 永井大三段
■9月11日(金) 関西将棋会館
藤本渚七段 対 高田明浩五段

