沖縄と日本の未来を大きく左右する沖縄県知事選が27日、告示されました(9月13日投票)。高市政権による露骨な選挙介入に対する怒りの声が広がっています。米軍による占領支配から本土復帰して54年、県民の誇りと尊厳を取り戻すための苦闘が続く沖縄。玉城デニー知事3選に向かう県知事選の歴史的意義を考えます。(竹下岳)
(写真)自身の母のふるさと伊江島を背にして第一声を上げる玉城デニー知事=27日、沖縄県本部町
分断を団結の力で克服 苦闘の歴史 デニー県政
「基地のない平和で豊かな沖縄」。この悲願を実現するため、県民は幾度となく団結し、1972年、本土復帰を勝ち取りました。しかし、日米両政府は分断の常套(じょうとう)手段である「アメとムチ」=基地と引き換えの利益誘導で団結を破壊し、復帰後も基地を維持してきました。米軍による犯罪・事故・環境汚染は野放しにされ、街づくりが阻害されてきました。
95年9月、沖縄本島中部で、米兵3人が女子小学生を集団暴行する事件が起きました。翌月に開かれた県民大会には、党派を超えた8万5000人が結集。県民は再び団結します。
沖縄の基地を失うことを恐れた日米両政府は96年、住宅地のど真ん中にある米軍普天間基地(同県宜野湾市)の「県内移設条件付き」返還を打ち出します。今回の県知事選最大の争点である普天間基地問題の出発点です。
やがて、普天間基地に代わる名護市辺野古の新基地建設が決定。県民は辺野古の是非をめぐり、再び分断させられました。その中にあって辺野古住民のたたかいが結実し、2010年、「辺野古の陸にも海にも新基地を造らせない」と公約した稲嶺進氏が名護市長選で勝利しました。
13年1月、県内全41市町村長、議会議長らが署名した「建白書」が政府に提出され、「普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設の断念」が県民総意となります。14年11月、「建白書」実現の先頭に立った翁長雄志氏が県知事選に圧勝。保守・革新を超えた「オール沖縄」県政が誕生し、歴史的な転換点を迎えました。
翁長県政は誕生直後から日米両政府の激しい攻撃にさらされますが、一歩も引きませんでした。そこにあるのは、基地をはさんで県民同士が争ってきた歴史を終わらせ、「誇りある豊かさ」を実現したいという、確固たる信念でした。
18年8月、志半ばで亡くなった翁長氏。その遺志を継いだのが玉城デニー現知事です。同年9月、22年9月の知事選はいずれも圧勝。コロナ禍という未曽有の危機を乗り越え、「誰ひとり取り残さない」政策は着実に前進していきました。
デニー県政はあらゆる権限を使って辺野古新基地阻止に取り組みました。司法まで動員した権力総がかりの攻撃で権限を奪われましたが、デニー知事は27日、「辺野古は絶対反対だ」と力強く訴えました。
強制される分断と、これを乗り越えようとする団結の力。その苦闘の歴史の上に立っているのが、デニー県政なのです。
「辺野古が唯一」は破綻 普天間解決の重大転機
「返還」合意から30年の今年、知事選の最大争点である普天間基地問題は重大な転機を迎えました。日本政府は、辺野古が普天間基地問題の「唯一の解決策」だと繰り返して工事を強行してきました。
ところが、米国防総省は今年4月、辺野古新基地が完成しても、別の「長い滑走路」を用意しなければ普天間は「返還されない」との見解を公表。その「長い滑走路」として想定されているのは、県の大動脈である那覇空港です。
そもそも、辺野古新基地は軟弱地盤の工事が難航して完成のめどが立っておらず、「完成」しても沈下が続くため、延々と改修工事が必要となります。このままでは、米軍が辺野古を使い物にならない基地とみなし、普天間に居座る可能性が濃厚です。
「辺野古容認」を公言する自民党候補を選んだ先には、破滅的な辺野古の工事継続、普天間基地の「永久化」と那覇空港の「米軍基地化」という最悪の道が待っています。
30年間にわたって用いられてきた、辺野古が「唯一の選択肢」だという口実が大ウソだったことが明らかになった今、心ならずも辺野古容認の選択をした人を含めてデニー知事の下に団結し、普天間基地問題の解決策を根本から問い直す局面にきています。
「沖縄のことは沖縄で」 政権介入には屈しない
高市政権は権力を総動員して県民に襲いかかっています。政権与党の維新に加え、公明党県連、国民民主、さらに沖縄戦の歴史を公然と否定する参政党、日本保守党といった反動勢力を結集。かつてない規模の企業締め付けも行われ、デニー陣営を組織力で圧倒する狙いです。
加えて、自民党県連と長年の敵対関係にあった下地幹郎元衆院議員を東京に呼びつけ、県知事選の立候補をとりやめさせ、自民党が推す古謝玄太候補の支持まで約束させました。すでに、下地氏の処遇も取り沙汰されています。
世界でも類例のないトランプ米政権すりよりの高市政権にとって、日米合意である辺野古新基地建設は絶対的な“責務”です。沖縄を「国防の最前線」に位置づけ、軍事要塞(ようさい)化を進めるためにも、何としても県政を奪還しようと執念を燃やしています。
加えて、内閣支持率の低下や首長選での敗北が続くなか、沖縄県知事選での敗北は政権基盤を揺るがす事態になりかねない―。なりふりかまわない高市早苗首相の動きは、そうした危機感の表れでもあります。
高市政権による下地氏囲い込みに対して、デニー陣営は、「県民不在の裏取引だ」と批判。「沖縄のことは沖縄で決めよう」と力を強めています。
県政史上、最も激烈になる今回の知事選。容易ならざるたたかいですが、デニー知事が勝利すれば沖縄と日本の未来に大きな希望をもたらします。デニー選対の高良沙哉本部長は檄文(げきぶん)で「県民一丸となった闘い」を呼びかけました。

