米国がイランに先制攻撃を仕掛けてから6カ月になります。国連憲章と国際法を踏みにじった攻撃は内外から批判を浴び、軍事的にも行き詰まった末、戦争終結やイランの核問題解決に向けた覚書を交わしました。しかし履行は進まず、「60日以内」とした最終合意達成の期限は8月17日で過ぎました。原因は、トランプ政権がどう喝と攻撃を繰り返し、武力の応酬がやまないことにあります。
■道理ない制裁拡大
覚書は第1項で、レバノンを含むすべての戦線での「軍事行動の即時かつ恒久的な終結」を宣言しました。「今後、互いにいかなる戦争または軍事行動も開始せず、武力の威嚇または行使を控える」と約束しました。最終合意で「戦争の恒久的な終結」を確認します。
第2項では両国が「互いの主権および領土保全を尊重し、互いの内政への干渉を控える」ことを確約しました。
ところがトランプ大統領は覚書に署名した際、イランが合意を順守しなければ「すぐにでも頭の上に爆弾を落とす」と言い放ちました。6月下旬にはホルムズ海峡で船舶が攻撃されたとして、攻撃を再開し、イランが反撃して7月末まで攻撃の応酬が断続的に続きました。トランプ氏は「覚書は終わった」とさえ述べています。
武力攻撃を完全にやめない限り、外交交渉に入ることなどできません。覚書がほごにされかねない状況に陥っている責任はトランプ政権にあります。攻撃の完全停止はもちろん、再び攻撃しないことを保証すべきです。
トランプ政権は24日、イランと経済取引を続ける国や企業に二次制裁を科す措置を発表しました。「世界の指導者は決断するときだ。米国かイランかだ」(ベセント財務長官)と、世界各国を米国に従わせ、イランへの圧力強化に動員しようとしています。第三国まで制裁対象にすることに、一片の道理もありません。「米国は新たな制裁を科さず」と明記した覚書にも反しています。
■力の支配出口なし
もともと、イランの核問題について交渉が行われていたのに、一方的に打ち切って攻撃を開始したのは米国です。イランの非核化をめざして2015年に結ばれた国際合意から18年に離脱したのも第1次トランプ政権です。
イランに対する先制攻撃は、紛争解決に当たっての武力行使禁止、主権平等の原則を明記した国連憲章に違反する侵略にほかならず、どんな理由でも正当化できません。
トランプ大統領は開戦前から「国際法は必要ない」と公言し、「法の支配」の大原則を踏みにじる姿勢をあからさまにしています。国連や各国でトランプ政権を非難する声が上がり、北大西洋条約機構(NATO)の欧州諸国政府も大半が不支持や非協力の姿勢をとったのは当然です。
米国が力による支配に固執する限り、出口はありません。ますます世界から孤立し、11月に行われる中間選挙で米国民の厳しい審判を受けるのは必至です。政治解決に向けて交渉に踏み出す以外に道はありません。

