ことし6月に開催されたILO(国際労働機関)総会は「プラットフォーム経済におけるディーセント・ワーク(人間らしい労働)に関する条約」(第193号条約)を採択しました。
プラットフォーム(PF)とは、労働者をほとんど雇用せずに労働者に仕事を仲介するだけの企業です。データ収集やデザイン、翻訳などオンライン上での仕事や、アマゾン、ウーバーなどの配達員、ライドシェア運転手などに仕事を仲介しています。
第193号条約は、これらすべてのプラットフォーム労働者に国際労働基準を保障する世界初の条約です。日本の政労使も賛成しました。
PF労働者は自営業者あつかいにされ、労働者としての権利が否定されています。ILOは、雇用関係の外におかれているそうした労働者の権利保護について「最もやりがいのある重要な課題の一つ」(ソマビア元事務局長)と重視してきました。
■包括的に権利保障
1990年代後半に、請負契約の労働者の保護からとりくみを開始し、2006年の「雇用関係に関する勧告」(第198号)の採択に結実させ、さらに今回のPF労働者保護条約の採択へと前進させました。国際労働組合総連合(ITUC)は条約採択を「歴史的」と評価しています。
今回の条約は加盟各国に対し、▽団結権・団体交渉権や雇用と職業における差別禁止、安全で健康的な労働環境などの基本的な原則と権利▽暴力とハラスメントの撤廃、ディーセント・ワークの促進▽他の労働者と同等の社会保障の適用▽均等待遇―の保護措置を求めます。
また、▽PF労働者の個人情報とプライバシーの保護▽仕事の割り当てや評価を管理するアルゴリズム(自動化システム)の使用について事前に労働者とその代表へ情報提供すること▽不当なアカウント停止や無効化(雇用・契約の終了)決定の見直し―を求めます。
条約は、労働者が雇用関係にあるか否かという「労働者性」について、各国が労働者の業務や報酬・支払いなどの事実に照らして正確に判断するための適切な措置を講じるよう定めています。
■日本も早く批准を
日本で労働者性の判断基準を示しているのは「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(1985年12月19日、旧労働省の研究会報告)です。「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する許諾の自由の有無」「業務遂行上指揮監督の有無」「勤務場所、勤務時間の拘束性の有無」などの要素を例示し、それらを「勘案して総合的に判断する」としますが、41年前のもので時代遅れです。
2023年11月からフリーランス新法が施行されました。フリーランスの多くが報酬カットや一方的な契約打ち切りなどに苦しむもとで、適正な取引ルールの設定は一歩前進ですが、無権利状態の改善こそ急がれます。今回の条約と「雇用関係に関する勧告」という今日の国際基準に基づき労働者性を広く認めて働く者を保護するときです。早期の条約批准が求められます。

