2016年8月11日に「山の日」が施行されて10年がたちました。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨とした「国民の休日」です。日本では都市の近くに標高数百メートルから千メートル前後の山があり、多くの人がハイキングや登山を楽しんでいます。
「山の気温が高い」「雪渓が小さくなった」という声が聞かれます。台風や暴風雨による被害で荒れた山が増えています。気候変動の影響を登山者は肌で感じています。地球環境を守る運動をさらに広げていく必要があります。
山の環境整備は、多くの場合、有志の努力に依存しています。維持管理が難しくなっている所もあり、登山文化の危機すら指摘されています。
■行政が役割果たせ
国立公園や国定公園などについて定めた自然公園法は「優れた自然の風景地を保護する」とともに「生物の多様性の確保に寄与する」ことを目的に掲げています。
しかし、国が人員の配置や現場への予算配分で法の趣旨にふさわしい位置づけをしているとは言えません。専門的な国家公務員である自然保護官(レンジャー)は全国で三百数十人です。国立公園1カ所あたりの人数はきわめて少数です。
山小屋や登山道は、山に親しむために不可欠のインフラです。
山小屋は宿泊以外に、緊急避難場所やトイレの提供、登山道の整備、遭難対策など多くの役割を果たしています。にもかかわらず、法律の上では旅館・ホテルと同じ扱いです。物価高で経営は一段と厳しさを増しています。老朽化した小屋も増えています。
山小屋が公的使命をいくつも担い続けることは限界にきています。山小屋が一つなくなれば、その山域で拠点を失い、最悪の場合、登山ができなくなる恐れがあります。
登山道は、放っておけば斜面の崩壊や下草の成長によって通れなくなります。橋や鎖のような工作物は経年劣化で強度が落ちてきます。補修が欠かせませんが、管理責任者が不明な登山道が多く、このままでは維持が困難です。国道、都道府県道のように、登山道にも維持管理の責任者を決め、公的予算を配分すべきだとの提言も登山家や研究者から出されています。
欧米やニュージーランドの自然公園では山小屋や登山道に行政が責任を持つ体制がつくられています。
山は国民の共有財産です。自然公園を支え続けるために行政機関が責任を担うべきです。山小屋や登山道が果たしているかけがえのない役割を正当に評価し、必要な予算を配分すべきです。
■リニア中止の声も
JR東海が進めるリニア中央新幹線建設は南アルプス国立公園をはじめ、自然環境にダメージを与えています。山小屋が建設作業員の宿舎にあてられ、登山に使えなくなったところもあります。著名な登山家が建設中止を求める署名運動を呼びかけています。
豊かな自然を守り継承するのは今の世代の責務です。山に登る人も登らない人も、山の環境に関心を持ち、声を上げていくことが重要です。

