終戦の日の15日、高市早苗首相は靖国神社の参拝は見送ったものの、近くから遙拝(ようはい)、玉串料を納めました。戦没者追悼式典での式辞では「反省」の言葉を消し、「戦争の惨禍を繰り返さ『せ』ない」と「せ」を挿入し、日本が主体的に負うべき戦争責任をあいまいにし、侵略戦争を正当化する立場を浮き彫りにしました。
内閣からは、小泉進次郎防衛大臣ら閣僚4人が靖国神社を参拝しました。自民党からは鈴木俊一幹事長ら幹部がそろって参拝、「高市総裁の英霊に対するお気持ちを体して来た」と説明しました。
さっそく閣僚などの参拝が侵略戦争を美化する危険な動きとして内外から厳しい批判を受けているのも当然です。
■戦争動員へ再現か
靖国神社は戦前、国民を戦争に動員する精神的支柱の役割を果たしました。現在も日本を守る戦争と礼賛し、「国家防衛のためにひたすら『国安かれ』の一念のもと、尊い生命を捧(ささ)げられた方々の神霊」をまつるとしています。
この見地は、侵略戦争という歴史的事実を偽造し戦後政治の原点を否定するもので、国際的にも通用しません。
かつて栗山尚一元外務次官が「(靖国参拝は)同神社の『大東亜戦争』肯定の歴史観を共有しているとの印象を与える結果となりかねないので、控えるべきである」と言ったのも当然でした。
こうした判断すらできないところに現在の政府が立ち至っている無知迷妄ぶりと危険の深刻さがあります。
いま靖国神社の参拝が、「戦争する国」に不可欠な精神的支柱として、再び靖国神社を祭り上げる動きと結びついていることは重大です。
日本は集団的自衛権の行使の領域に踏み出し、アメリカの対中戦略の柱に位置づけられ、「日本は西太平洋で最前線に立つ」(ヘグセス米国防長官)とされています。
実戦面でも、南西諸島の軍事基地化をすすめ、多数の自衛官が死傷することを想定した日米共同訓練もおこなわれています。
岩田清文元陸上幕僚長は「有事に関する強い危機感が示され、戦争を抑止するための具体化が進んでいる。その中で自衛官が戦死した場合…慰霊の在り方についても静かに議論を深めていくべき」だとし、「いつまで靖国での慰霊を他国に配慮し続けるのか」と語っています。
火箱芳文元陸上幕僚長は「自衛隊から死者が出た場合にどう弔うのか」と問い、「靖国にまつるのが一番いい方法ではないか」とあけすけです。
■真に悼む平和の道
実際に自衛隊の靖国集団参拝が繰り返しおこなわれ、靖国神社の宮司も2024年から元海将が就任しています。
靖国神社の参拝は、単に過去の戦争についての歴史認識をめぐる問題ではありません。いま、日本が平和か戦争か、の岐路にあたりどの道にすすむのか問われているのです。
戦争犠牲者を本当に悼むのは、戦争の歴史から学び、憲法を生かした外交による平和の道に踏み出す決意を固め合うことです。

