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2026年8月16日

東海中学・高校「サタデー・プログラム」詳報

 東海中学・高校が6月27日に開いた市民講座「第49回サタデー・プログラム」―日本共産党の志位和夫議長、自民党の石破茂前総裁(前首相)、枝野幸男前衆院議員(元立憲民主党代表)による講演とてい談(ユーチューブ動画で8月10日公開=QRコードから視聴可)の中身を紹介します。

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■志位議長の講演

災害・原発・戦争-「有事対応」政治の責任は?

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(写真)発言する志位氏=6月27日、東海中学・高校「サタデー・プログラム」実行委員会のユーチューブチャンネルの動画から

 みなさんこんにちは。今日は、3人でお話しする機会をあたえられまして、とてもうれしく思います。

 枝野さんとは、野党で協力するために、これまでもいろいろな話し合いをしてきました。石破さんとは政治的立場は違いますが、先日、リハックというネット番組でクラシック音楽について対談しまして、とてもおもしろかったです。石破さんがクラシック音楽をいかに愛しているか、楽しい会話になりました。

 私は、政治家というのは、それぞれの立場がありますから、立場の違いは大いに議論したらいいけれども、お互いに相手をリスペクトして、人間として尊重して、一致点があれば協力する、こういうことが大事だと思っていまして、今日、てい談があるというので、ぜひそういう話もできたらと思っています。

自然災害・戦争-政治の責任はどこにあるか

 さて、今日は、「有事対応」、いろんな非常事態において、政治が何をなすべきかがテーマです。非常事態にもいろいろあると思うのですね。

 一つは、地震や津波や台風などにともなう大規模な自然災害です。こういう自然現象そのものは避けることはできませんが、自然現象にともなう災害の多くは人災です。ですから、人間の英知で災害を未然に防止し、被害を最小限に食い止めることはできますし、これは政治の責任だと思います。

 もう一つは、戦争です。戦争は、人間が起こすものです。避けることができます。戦争を避けるためには、どういう手段が合理的で理性的なのかを見極めて、平和をつくるために行動する。これは政治の最も重要な責任だと考えています。

 私はこのことをこの間、日本が直面してきた問題、いま直面している問題にてらして、いくつか考えてみたいと思うのです。

東京電力福島原発事故は避けられなかったか、教訓が生かされているか

 まず2011年に起こった東日本大震災です。この大震災から引き出すべき教訓はさまざまありますが、なかでも最大のものは、東京電力福島第1原発事故だと思います。枝野さんからもお話がありました。事故直後、16万人もの方々が着の身着のままの避難を強いられ、いまなお、多くの方々がつらい、故郷を追われての避難生活を余儀なくされるなど、深刻な被害がいまでも続いています。

 この大事故は避けることができなかったのか。実は警告はされておりました。ここに持ってまいりましたが、2006年12月、日本共産党の吉井英勝議員が、政府への質問主意書で、巨大地震が発生すると、高圧線の鉄塔が倒れて外部電源が絶たれ、非常用の内部電源も機能しなくなり、全電源喪失に陥り、原子炉のメルトダウンが起こる危険があるのではないかとただしたのです。政府の答弁書が閣議決定されていますが、「全電源喪失が発生するとは考えられない」と答えた。しかし実際には、その通りのことが起こったわけですね。つまり、重大な原発事故は起きないという「安全神話」が、大事故につながったのです。

 それではその教訓がいま、生かされているのか。政府は、大震災のあと、新しい規制基準を決めて、これをクリアすれば安全だといって、原発の再稼働をすすめています。政府は、新規制基準は「世界で最も厳しい基準です」と言ったけれども、事実ではありません。たとえば、新規制基準には、ヨーロッパで導入されているコアキャッチャーと言いまして、溶けた炉心を受け止めて冷やす設備や格納容器を二重にするなどの基準がないんです。そして、実効性のある避難計画がないにもかかわらず再稼働をすすめている。新しい「安全神話」が復活しているのではないか。

 ドイツでは東日本大震災をきっかけに脱原発にふみ切り、23年4月には最後の1基が止まりました。原発事故を体験した日本でこそ、私は原発をゼロにする決断を行って、再生可能エネルギーと省エネルギーへの切り替えをはかることが必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

コロナ・パンデミックでの医療崩壊-反省がいま生かされているか

 もう一つは、2020年から22年の新型コロナのパンデミックです。ここにもさまざまな教訓があると思いますが、みなさんも医療崩壊が起こったことは覚えておられると思います。保健所が足らない、病床が足らない、救急搬送ができない、PCR検査が受けられないなどの事態が日本中で起こり、多くの命が失われました。

 これについても実は警告がありました。ここに持ってまいりましたが、2010年6月に、厚生労働省の新型インフルエンザ対策総括会議が報告書を出しまして、今後についての提言を行っているのです。国立感染症研究所や保健所などの組織、人員を大幅に強めるべきだ、PCR検査をふくめた検査体制の強化が必要だなどの提言をしています。しかし、この提言には、立派なことが書いてあるのですが無視されました。そして、医療崩壊になりました。

 新型コロナの経験をふまえましてもう一つ、2022年6月、政府の有識者会議が総括的文書を出しまして、そこでは、保健所の業務がひっ迫したこと、病床が十分稼働できなかったこと、救急搬送が困難になったことなどを指摘して、2010年の「提言」があったにもかかわらず、この10年間、危機意識が薄くなって、保健・医療体制の構築が不十分だったという反省を書いています。

 それではこの反省がいま、生かされているでしょうか。そうとは私、言えないと思うのです。コロナのあとも政府は、全国の病院のベッドを11万も削減する計画をすすめています。そのうえ「地域医療構想」といいまして、病床を削る、公立病院を統廃合するなどをすすめている。このままでいいのかが問われているのではないでしょうか。

 私は、2020年、国会でコロナ問題を安倍総理と質疑したさいに、医療崩壊の問題をつっこんでとりあげました。そのさい、当時、全国1600の病院が加入する全国公私病院連盟の会長さんをつとめておられた邉見公雄さんの言葉を国会で紹介しました。邉見さんは、こうおっしゃった。“医療には本来、ゆとりが必要です。それがまったくありません。そこにコロナが襲ってきた。もっと財政支援が必要です”―こういう訴えでした。ゆとりが必要だ。平時に医療の体制を強化して、ゆとりのある医療体制をつくることをぬきに、感染症有事には対応できないというのが、私は大きな教訓として生かすべきではないかと考えています。

「緊急事態条項」は何のため?--人権や参政権を停止する戦争体制づくり

 最後に、憲法を変えて、「緊急事態条項」をつくるという議論について、私たちの考えを述べておきたいと思います。

 この間、主張されている緊急事態条項の内容は、内閣が緊急事態と認定すれば、国会の議決を経ずに法律に代わる「緊急政令」を制定したり、「緊急財産処分」として予算を執行することができるというものです。こうなりますと、内閣に権限が集中して国民の基本的人権が制限されることになっていく。内閣が国会の承認を得て議員の任期を延長できるという内容もあります。こうなりますと、国民の参政権を停止して、時の政権が選挙の審判を経ずに居座ることも可能になってしまう。憲法を停止させるような重大な内容の憲法改定をいったい何のためにやろうというのでしょうか。

 緊急事態の定義をみると三つあります。一つは大規模な自然災害、二つ目は感染症のまん延、三つ目が外部からの武力攻撃です。しかし、東日本大震災でも、コロナのまん延でも、憲法に緊急事態条項がないために対応できなかったという問題は一つもありません。現在の法律のもとでも強力な措置がとれるようになっている。それはさきほど枝野さんが言われたとおりだと思います。お話ししているように、どちらも問われているのは憲法の問題ではなくて、必要な備えを怠った政治の責任ではないでしょうか。

 結局、緊急事態条項を盛り込む狙いというのは戦争が起こったときに、国民の基本的人権や参政権を停止する戦争体制づくりにあるのではないか。いまやるべきは、そういう戦争の準備でしょうか。

 それでも「心配だ」という声もあるでしょう。「抑止力」の強化が必要だという考えもあるかもしれない。しかし、軍事的抑止力の強化が平和につながるか。「抑止」というのは、「いざとなったらこの軍事力を使うぞ」と相手に恐怖を与えることで相手を抑えつけることにあります。こっちが恐怖を与えれば、相手も恐怖でこたえようとする。つまり、恐怖対恐怖、軍事対軍事の悪循環に陥ってしまいます。「安全保障のジレンマ」と言われますが、軍拡競争に陥り、戦争のリスクを高めてしまうのではないでしょうか。

 私は、軍事的抑止力強化の先に決して平和は訪れないと思います。相手に恐怖を与えるのではなくて、安心を与える外交こそ必要ではないでしょうか。憲法9条を生かして、東アジアを戦争の心配のない地域にするための外交戦略をもち、実行することが大事じゃないかと思います。

 ほかの国は緊急事態条項を持っているのに、日本は持っていないのは問題だという議論もあるかもしれません。しかし、日本国憲法に緊急事態条項がないのは、歴史の重い教訓を踏まえたものです。戦前の大日本帝国憲法は「緊急勅令」「緊急財産処分」を定めていて、当時の政府はこれを使って、侵略戦争に反対する国民を弾圧したり、侵略戦争を遂行する戦費調達をすすめた。

 日本国憲法が緊急事態条項を否定したのは、あの悲惨な侵略戦争を二度と起こさないという決意にもとづくものなのです。私は、緊急事態条項という議論は、憲法9条を変えて、日本を海外で武力の行使ができる国にしてしまうという議論と一体のものであって、反対だということを申し上げておきたいと思います。

■志位・石破・枝野3氏のてい談

災害対策・平時の備えを「TKB48」で災害関連死をなくそう

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(写真)東海中学・高校「サタデー・プログラム」で紹介を受ける(左から)志位、石破、枝野の3氏=6月27日、同プログラム実行委員会ののユーチューブチャンネルの動画から

 「サタデー・プログラム」は、志位、石破、枝野3氏によるてい談に移りました。

 枝野氏から、災害対策基本法についての所見を聞かれた志位氏は、私人の権利を一定制限し、非常事態で内閣に権限を与える制度でもあるが、災害対策基本法は、災害救助法もあわせて必要だと指摘。「直すべき点もあるが、基本的にしっかりと実施することが大切です」と述べました。

 その上で、「問題は平時の備え」であり、原発でいえば「新規制基準」に重大な問題点があり、緊急事態に対応する平素の医療のゆとりも備わっていないとして、「これをなおすのが政治の役割です」と強調しました。

 志位氏は、10年前の熊本地震では災害関連死が直接死の4倍になった事実を挙げるとともに、イタリアの先進的な例を紹介。国・自治体・ボランティアなどが協力して、トイレ、キッチン、ベッド―を48時間以内に行き渡るようにする「TKB48」を日本でも実現することを提案し、「せっかく防災庁がつくられるのだから、災害関連死をゼロにするため、イタリア並みの制度をつくりましょう」とよびかけました。

 東日本大震災時に官房長官を務めた枝野氏は、「災害対策の(救急用の)備蓄は国でやった方がいい。ベッド、毛布、トイレなどは国がまとめて備えておくべきです」と発言。石破氏は、「TKB48はどこの地域で何が起きても対応できるということですが、日本はそうなっていない。災害後に起きる人災を防ぐのが政治の仕事。お二人のご意見に賛同します」と話しました。

 志位氏は、17年間で117の病院が閉鎖、3万2000もの病床が減らされた事実を挙げ、「消防、警察、自衛隊、病院の中で病院だけが民間主体です。民間病院にも公費を入れ、公立病院をつぶすようなことはやめる。これが大事ですが、どうですか」と問題提起しました。

 枝野氏は、「結論としては異論をはさみようがない」、石破氏は、「医療みたいに社会共通の資本になるものは、商業主義でなく税金によってみるべきというのは理屈としてはある」と応じました。

問題は懲罰的抑止力-長射程ミサイル配備、逆に日本を危険にさらす

 石破氏は、志位氏の基調講演の「抑止力」の話について言及。「安全保障のパラドックス」については、お互いに疑心暗鬼になり軍事力が拡張され、ふとしたことから大戦争になったのは人類の歴史であったと認め、「常に留意しなければならない」と述べました。一方で、軍事力を「抑止力」のパーツの一つとして常に整備しておくのは独立主権国家としては必要だと主張。そのさいそれが「報復的、懲罰的な抑止力」であってはならないと語るとともに「拒否的な抑止力」は必要ではと、志位氏に質問しました。

 志位氏は、「拒否的抑止についてのご質問ですが、私たちはすぐに自衛隊をなくすべきという立場ではありません。いま問題になっているのは、懲罰的抑止力を日本が持っていいのかということです」と述べ、日本の国是であった「専守防衛」さえ投げ捨て、相手国に届く長射程ミサイルを配備することは、日本を守っているつもりの行為が逆に危険を拡大してしまう「ジレンマ」に陥っていると強調しました。

 その上で志位氏は、徹底的な話し合いで平和を構築してきた東南アジア諸国連合(ASEAN)の例を挙げ、これを東アジア全体に広げるために、日本、中国、アメリカも参加する東アジアサミットを活用・発展させる党の「東アジア平和提言」について語りました。

日中・日朝-過去の実効ある取り決めを生かした外交で解決を

 枝野氏は、志位氏に対して、仮に政権を取ったときに、前政権が他国とめちゃくちゃな外交関係にあるときにどうすれば良いのかと質問し、「リアルに政権をめざすならば『抑止力』もやらなきゃいけない」と主張しました。

 志位氏は、「過去にその国とどういう取り決めを交わしているか、どういう実効ある取り決めがあるかということから出発して外交、対話によって関係を打開していくことをやりたい」と返答。中国との関係を例に出し、1972年の日中国交正常化のさいの共同声明をはじめ4回にわたる重要な合意が首脳間で交わされていることを紹介。2008年の「(日中両国は)互いに協力のパートナーであって、互いに脅威とならない」との首脳合意を双方が守ることで両国関係を前向きに打開することを提唱していることを述べました。志位氏はさらに、高市早苗首相が、72年の共同声明に反する発言を行ったことで、中国と話し合いができなくなっていると指摘し、首相発言の撤回が必要だとの認識をあらためて強調しました。

 北朝鮮との関係では、2002年の日朝平壌宣言―核、ミサイル、拉致、過去の清算の諸懸案を一つのテーブルにのせて包括的に解決する合意があると述べ、「中国とも、北朝鮮とも、戦争だけは絶対に行ってはならない。過去の道理ある合意に基づいて外交関係を立て直すことを追求すべきです」と話しました。

 志位氏はさらに、いますぐに自衛隊をなくせとは言っておらず、政府が、「専守防衛を貫く」「集団的自衛権は行使できない」という立場を変えてしまったことを問題にしていると強調。「こういう政治のゆがみをただすうえで、日米安保や自衛隊に対する立場の違いがあってもいろいろな方と協力できると考えています」と述べると会場からは大きな拍手が起きました。

メッセージ マルクスを読み、社会の仕組みを見抜き、社会を変えよう

 志位氏は最後に、生徒たちへのメッセージとしてこうよびかけました。

 「マルクスを読もう」―。19世紀のドイツの思想家カール・マルクスが書いた、資本主義という世の中の仕組みをとことん明らかにした『資本論』を紹介。この本がアメリカで第4次のブームになっていることなどを語りました。

 資本主義というシステムのもとで気候危機や貧富の格差の拡大などいろいろな問題が起こっていますが、「このシステムで人類は終わりなのか。そうは思っていません。人類は資本主義を乗り越えて先に進む力をもっている。それを明らかにしたのがマルクスです」と力説。ジェンダーや環境など現代の熱い問題を解決するうえでも『資本論』にはいろいろなヒントが書かれているとしてこう語りかけました。

 「一度読んでみたらどうでしょう。人類が生み出した古典にチャレンジして生きる糧をつかみ出してほしい。社会の仕組みを見抜いて、この社会を変えていくことをやってほしい。これが私からのメッセージです」

 司会者は、つぎのようにてい談をしめくくりました。

 「異なる立場で政治を担ってきた3人の考え方には違いがありますが、だからこそこの場面は意義があります」「マルクスが言った弁証法的に議論をしてよりよい結論に導く考え方です」