ロシアのプーチン大統領は13日、日本の領土である千島列島の択捉(えとろふ)島を初めて訪問し、千島列島の領有を誇示しました。日本共産党の志位和夫議長は同日の談話で、「ロシアがウクライナへの無法な侵略戦争など覇権主義的な行動を強めている今、領土問題の解決のためには、国際的道理にたった行動がいよいよ大切である」と指摘しました。
プーチン氏は択捉訪問に先立つ12日、サハリン州で軍事演習を視察した際、千島列島の領有は「第2次世界大戦の終結に伴い生じた現実として、国際諸文書に明記されている」と述べました。在日ロシア大使館も「第2次世界大戦の結果だ」などと述べて正当化しています。しかし、これは事実とは異なります。
戦後処理原則に違反
第2次世界大戦の際、旧ソ連を含む連合国は、「領土不拡大」を戦後処理の大原則にすることを繰り返し宣言していました。対日戦の戦後処理についても、連合国は、1943年の「カイロ宣言」で、「同盟国は自国のために利得も求めず、また領土拡張の念も有しない」こと、日本は「暴力及び貪欲により日本国の略取したる……一切の地域から駆逐される」ことを宣言しています。
ところが、45年の米英ソ3カ国によるヤルタ会談で、米英が「対日参戦」を求めたのに対して、ソ連のスターリンが、その見返りとして、「千島列島の引き渡し」を要求。米英側が応じ、秘密の「ヤルタ協定」に書き込まれました。ソ連はこれに基づいて日本の歴史的領土である千島列島を自国領土に一方的に編入したのです。「領土不拡大」という戦後処理の大原則に対する明白な違反です。
51年、日本の「主権回復」を認めたサンフランシスコ講和条約を締結する際、アメリカの要求で「千島列島・樺太放棄」の条項(第2条c)が盛り込まれました。プーチン氏が言う「国際諸文書」とは、主にこの条項を念頭に置いたものとみられます。しかし、この条項は「ヤルタ協定」の不公正の延長線上に立ったもので、これも「領土不拡大」という大原則に背く不公正なものでした。
「第2次世界大戦の結果」などというのなら、こうした不公正を是正し、戦後処理の大原則である「領土不拡大」という国際的な道理にたちもどるべきです。
「4島返還」道理なし
高市早苗首相は13日、「北方領土は、歴史的にも国際法上もわが国固有の領土だ。ロシアの現職の大統領による今般の択捉島訪問は、北方領土に関する日本の一貫した立場と相いれない」と抗議しました。しかし、この立場には重大な弱点があります。
「北方領土」とは、「国後(くなしり)、択捉、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)」の4島を指します。日本政府は、これら4島(南千島と北海道の一部)は「千島列島に含まれない」として、4島に限った返還を求めています。日本のメディアもこの立場に追随し、「プーチン大統領が北方領土を初訪問」などと報じています。
しかし、領土は平和時に画定したものが基準となります。日ロ間では1855年の日魯(ろ)通好条約で国後・択捉が日本領として画定し、75年の「樺太(からふと)・千島交換条約」で、樺太全島をロシア領とする代わりに、「北千島」を日本領とした結果、千島列島全体が最終的に日本の領土となったことを踏まえなければなりません。(樺太は日露戦争の結果、日本が暴力的に奪ったもので、性格が異なります。歯舞・色丹はそもそも北海道の一部です)
サンフランシスコ講和条約における「千島」についても、日本政府は条約批准当時の1951年、国会答弁でも「北千島」「南千島」全体が「千島」だという認識を示していました。ところが、55年の日ソ国交回復にあたり、「南千島は千島にあらず」という立場に転換。その背景には、米国の入れ知恵があったと見られています。
孤立・行き詰まって
プーチン政権はウクライナへの無法な侵略戦争に見られるように、覇権主義を強めていますが、国際社会で孤立を強め、長引く戦争の影響で国内経済が疲弊するなど、深刻な行き詰まりを見せています。こうした中、日本から武力で奪い取って自らの「領土」にした千島列島を訪問することで、プーチン氏の覇権主義的な姿勢をあらためて誇示する狙いだとみられます。
そうであるからこそ、領土問題の解決のためには、国際的道理にたった行動がいよいよ重要になってきます。志位議長は談話で、「日本政府がサンフランシスコ講和条約にある『千島放棄』条項を不動の前提とせず、第2次世界大戦の戦後処理の不公正を正すという立場に確固として立ち、全千島列島と歯舞群島、色丹島の返還を求めることが必要である。わが党はその立場で政府が領土交渉の立て直しを図ることを強く求める」と述べています。(竹下岳)

