「犯罪行為を目撃した場合は交番や警察署へ届け出、緊急の対応を要する場合は110番を」―。国旗損壊処罰法案の国会質疑で、国旗損壊行為を目にした国民の対応を問われ、警察庁幹部はこう答えました。
国旗損壊処罰法が13日、施行されます。憲法が保障する「表現の自由」を侵し、ずさんで危険な悪法を発動させてはなりません。
■国家権力の判断で
国旗損壊処罰法は「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法」で「公然と国旗を損壊、除去、汚損」した者を処罰するもので、2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金を科します。
「不快、嫌悪の情」は国旗損壊の場に居合わせた人の感情とは関係ありません。「見た者が現実に不快感や嫌悪感を覚えたか否かではなく、あくまでも国旗を大切に思う感情を害するに足ると認められるか否かによって判断する」(法案提出者の自民・平沼正二郎衆院議員、参院内閣委、7月9日)というのです。国家権力が「国旗を大切に思う国民感情」を体現して判断するわけで、恣意(しい)的な運用を許す仕掛けになっています。
「著しく不快、嫌悪の情を催させる」とは何かも明らかではありません。
どんな方法、行為が処罰の対象になるのか、極めてあいまいなため、捜査当局の判断次第で、際限なく処罰対象が広がる恐れがあります。
日本共産党の山添拓参院議員が指摘したように「摘発の段階、起訴の段階、有罪かどうかの段階、どの段階でも際限なく処罰対象が広がり得る」危険なものです。
広がる批判と不安をごまかすため、国会の質疑では、処罰の対象にならない「具体例」が提出されました。
「国旗を新品の靴で踏み、何ら不潔にすることがない」「『お子様ランチ』に付属している旗を損壊等する」
お子様ランチの日の丸を汚したらどうなるのか―こんなばかげたことが真面目に議論されること自体、異様です。この法案が本来、不必要なものであるため何が処罰対象か明確化できず、法律の体をなさない姿を示しています。
一方で、政治的な抗議の意思として国旗を損壊することについては、「自己所有の国旗の損壊が政治的主張に付随しておこなわれたものであっても、公然とおこなわれ、著しく不快、嫌悪の情を催す方法でおこなわれたなら該当しうる」と処罰対象になると明言しています。
■違憲であり廃止を
こんな、ずさんで危険な悪法の施行を黙って見過ごすわけにいきません。法成立後、憲法研究者201人が4日、「違憲であり、廃止を」求める声明を発表、各紙社説も批判の声をあげています。
「国旗損壊処罰法には改めて反対する。自由や権利を縛るこのような立法が続かないよう、目を光らせ続けたい」(「朝日」7月19日付)、「法律の恣意的な運用を避けるよう強く求める。…権力による過度な解釈や適用を防ぐ不断の点検が不可欠となろう」(「日経」7月20日付)
発動を許さない国民的な監視が求められます。

