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2026年8月4日

主張

リニア新幹線建設
無謀な事業中止するしかない

 JR東海は、静岡県と7月に自然環境保全協定を締結したことを受け、リニア中央新幹線静岡工区の着工に踏み切ろうとしています。大井川の水資源、南アルプス国立公園の環境破壊、膨らむ工事費など、リニア建設の可否に関わる問題が山積みです。見通しのない事業で取り返しのつかない災厄をもたらしてはなりません。

■水、残土、大深度

 静岡工区が着工できず、9年間ストップしていた主な原因は大井川の水資源問題です。2013年、JR東海が、トンネル工事に伴って大井川上流部の流量が毎秒最大2トン減るとの試算を明らかにし、当時の川勝平太知事が着工に待ったをかけました。

 大井川は流域住民の生活や農工業を支えています。水量は安定せず、水資源の確保は昔から大きな問題でした。

 着工を容認する鈴木康友知事が24年に就任し、協定が結ばれました。しかし、工事で出る湧水の全量を戻すことが実際に可能かなど、肝心な問題は積み残しです。

 リニアは、開業をめざす東京・品川―名古屋間約286キロの86%がトンネルという例のない大工事です。特に、南アルプストンネルは山梨、静岡、長野3県にまたがり、総延長約25キロ、地下最大1400メートルの深さを掘削します。地上では山中に坑口が開けられ、機材を置くヤードや残土置き場が作られ、環境への影響がすでに生じています。

 何億年もの時を経て形成された自然環境を壊してはなりません。東京ドーム約46杯分といわれる膨大な残土の置き場や、有害物質を含む残土は大きな問題です。

 東京都内や愛知県内の大深度地下にトンネルが掘られることも大きな問題です。大深度は、都市部の地下40メートル以深です。地上の買収や地権者の同意は必要なく、補償も不要です。東京・調布市の外環道工事で20年に住宅地が陥没し、大深度工事の危険性が明らかになっています。

■見通し立たぬ開業

 リニア中央新幹線はそもそも事業として成り立つのかが問われています。東海道新幹線と並ぶもう一つの動脈をつくるとの触れ込みですが、東京・名古屋間だけの鉄道にどれだけ利用価値があるか疑問視されています。

 当初27年とされた品川―名古屋間の開業はすでに延期され、新たな開業予定は未定です。延伸して名古屋―大阪間を開業するのは45年の計画でしたが、今やまったく非現実的です。

 品川―名古屋間の総工費は当初5・5兆円の見込みでしたが、11兆円と2倍に膨らみました。物価高によって今後さらに増えるのは必至です。

 工費はJR東海自ら調達することで出発しましたが、16年から17年にかけて国から3兆円の財政投融資を受けました。「財投」は国が債券を発行して調達する公的資金です。こげつけば国民の負担になりかねません。

 JR東海の収益は東海道新幹線に依存しています。開業時期も工費も怪しい事業に収益を注ぎ込むことになります。どこから見ても無謀なリニア中央新幹線建設は中止すべきです。