AI(人工知能)についての国連専門家パネルは1日、初の報告書を発表、国際的なAI格差に警鐘を鳴らしました。共同議長を務めるカナダ・モントリオール大のヨシュア・ベンジオ教授は、リスク管理が追いつかなければ「破滅的な結果を招く恐れがある」と警告しました。
AIは、産業革命以来ともいわれる画期的な技術革新をもたらし、企業、市民生活、国家活動などあらゆる分野で利用されています。一方で、さまざまな害悪への警戒が世界中で急速に強まっています。
ことにAIの軍事利用は戦争の姿を変えています。ウクライナやイランでの戦争では無人機や標的選定システムが実戦投入され、軍事AI開発が加速しています。
■導入進める自衛隊
グテレス国連事務総長は「人間の判断なしに生命を奪うAI兵器は国際法で禁止すべきだ」と訴えています。
5月のアジア安全保障会議でも、AIの軍事利用を規制するルールがないことへの危機感を訴える声が相次ぎました。
しかし日本では、自衛隊がAIを活用した指揮・情報分析・無人システムの整備を重視しています。高市早苗政権が「成長戦略」のもとで、巨額の国家資金をAIなどの開発に投入し、軍事と経済の融合による「軍事大国」をめざしていることは重大です。
ここ数年、AIの問題が世界的な課題に浮上してきた背景には、「ChatGPT」の公開を契機とする、生成AI技術の驚異的な進歩があります。
企業では、AIによる業務効率化が進み、事務や設計、ソフトウェア開発などの仕事が代替され始めています。ホワイトカラーの人員削減や、高度な人材に需要が偏ることで賃金・雇用の格差が生じています。人間を精神的労働から解放する可能性と、新たな失業を生む危険性という二面性をもっています。
経済では、半導体メーカーや関連企業への巨額投資により株式市場が空前の活況を呈しています。しかし、その莫大(ばくだい)な利益は一部の巨大企業や投資家に集中し、市場独占と格差拡大という資本主義の新たな矛盾を生んでいます。
■国際協力と監視を
アメリカでは、ノーベル賞受賞者を含む経済学者など200人超の研究者らが共同声明を発表、雇用喪失に警鐘を鳴らし、AIが社会全体の利益につながるような規制や制度の構築を訴えています。
市民生活でも、生成AIは医療などに貢献する一方で、フェイクニュースやSNS上の世論操作、なりすまし犯罪や投資詐欺に悪用されています。情報社会を豊かにする力を持つ一方、「何を信じればよいか」を揺るがし、民主主義の基盤を危うくします。
いま問われていることは、AIの持つ利便と危険の二面性を自覚することです。国境を超える技術だからこそ、人間中心のAI利用のためには、国際協力と民主的な監視の仕組みが必要です。
AIを民主的に管理し、人間の尊厳と平和のために活用する道に踏み出すことが強く求められます。

