昨年の医療法改定により都道府県に策定が義務づけられた新「地域医療構想」は、国が高齢化のピークとしている2040年に向けて、自治体に地域医療の再編・集約化を行わせようというものです。
2025年に期限を迎えた旧「地域医療構想」は、病床を機能ごとに「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の四つに分類。職員配置が手厚く、医療費がかかる高度急性期・急性期病床を2015年度からの10年間で23万床減らすという目標をかかげ、自治体に病床削減を迫りました。政府・厚生労働省は、2019年9月に「再編統合について議論が必要」な病院として全国424の公立・公的病院を名指しする「リスト」も提示。医療体制の縮小を強力に推し進めようとしましたが、住民や自治体の反発もあるなか、実際の高度急性期・急性期病床の削減は10万床程度にとどまりました。
2040年に向けた新「構想」は、旧「構想」で「回復期」と区分されたリハビリなどを担う病床に、これまでは「急性期」とされていた、肺炎や骨折などで救急搬送される高齢者に対応する機能も合わせ持たせた「包括期」という新たな分類を導入。急性期病床とされてきた病床の多くが包括期病床に転換するという想定のもと、現在50万床ある急性期病床を、40年時点には24万床に半減させることを試算しています。(「2040年の病床数の必要量の機械的試算」)
同試算は、高度急性期病床についても、患者数の減少などで40年には現行より2・6万床減ると想定。高度急性期・急性期病床をあわせた削減数は28・6万床となり、旧「構想」の目標値と規模を上回る病床大削減の計画となっています。
この間、全国の医療機関は、長年にわたる診療報酬の抑制と資材価格の高騰による経営危機にあえぎ、医師・看護師など医療従事者の深刻な不足が続くなか、医療現場の疲弊は頂点に達しつつあります。そこに国が“給付費削減ありき”の計画を押しつけるのでは、医療崩壊の危機は加速するばかりです。
「地域医療構想」の名による病床削減を巡っては、かつて旧「構想」を主導した武田俊彦・元厚労省医政局長が、コロナ・パンデミックの際の反省から、大規模災害や感染症などの「有事」に備え、患者の増減などにかかわらず「常に一定の病床を確保し、余裕を持った人員体制を整えておく」ための、医療体制への支援と経営保障が必要と提言しています。(『病院』81巻第6号、2022年6月)
いま、医療現場に求められているのは、医療体制のさらなる縮小・後退を進める再編計画の押しつけではなく、地域医療の再生・強化をはかり、医療従事者の処遇改善と人員確保を応援するための診療報酬の抜本的な引き上げや公的支援の強化です。それらを患者負担増や保険料の負担増にはね返らせないための国費の投入も求められます。
医療提供体制のさらなる後退・縮小か、それを転換し、再生・充実への道をひらくのかが、住民のくらしと健康、地域の将来にかかわる大問題として、地方政治の大きな争点となっています。
(政策委員会 谷本諭)

