施設に寄せられた色紙にこんな一文が記されていました。「私は忘れません。ここで起きたことは、決して過去のこと、ここだけのことではありません。今も社会には差別と暴力の嵐が吹き荒れています」▼日本の社会のありようを根本から問うた、あの凄惨(せいさん)な事件からきょうで10年。現場となった神奈川・相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」では、遺族有志が設けた「鎮魂の碑」に花を手向ける姿が絶えませんでした▼手を合わせていた支援学校の職員は犠牲者のひとりと接点があったといいます。「今いえるのは、互いを認め分かち合える心が持てる寛容な社会になってほしいということだけ」だと▼「障害者には生きる価値がない」と凶行に及んだ元職員の植松聖死刑囚。その主張や行動は、命に優劣をつける優生思想が社会に根強く残っていることをあぶり出しました。事件後にはそれを賛美するような投稿がSNSで相次ぎ、自民党の国会議員からも人を選別し偏見を助長させる発言が続きました▼自分も殺される側にいるのではと、恐怖におびえていたと話す障害者も。施設で人生を完結させるのではなく、地域の中で生活していける共生社会のとりくみも支援が足りないのが実情です▼「心 ともに生きる」。鎮魂の碑にはダウン症の書家、金澤翔子さんによる書とともに、言葉が刻まれています。「助け合う社会のすばらしさ、大切さを、もう一度考えてみてください―」
2026年7月26日

