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2026年7月14日

きょうの潮流

 明日は第175回芥川賞の発表日。恒例の候補作一気読みです。今回は人間と労働をめぐる問題意識が際立っています▼小砂川(こさがわ)チト「ゾンビ回収婦」。AI(人工知能)の進出で解雇された「わたし」が、VR(仮想空間)に入り込み、日々飛び散るゾンビの残骸を拾い集める作業に居場所を見いだします。無意味でも動き続けることでしか自身の存在意義を認められない現代の疎外労働をあぶり出す意欲作▼八木詠美(えみ)「アンチ・グッドモーニング」。テレワークの普及で24時間職場とつながり、余暇の観劇中にも業務連絡が入って対応を迫られる生活の中で、致死的な不眠に陥る「わたし」。世界は奇妙にゆがみ始めます▼鈴木涼美(すずみ)「悪い血」。かつて女の革新性の体現とばかりに自ら飛び込んだ性産業の現場。後に妊娠した「私」は搾取され汚された記憶の数々にさいなまれて…▼仁科斂(れん)「丹心(まごころ)」。中国の開発業者から、未完成のまま放置された建物を美術館に設計し直してほしいと依頼された日本人建築家と助手。三者三様の思惑と打算が渦巻きます。表題は漢詩の一節から。泥中の蓮(はす)のごとく、そこに丹心はあるのか▼村司侑(むらし・ゆう)「ソリティアおじさんがいた頃」。最後は窓際族で定年退職した元同僚の通夜に参列した味噌(みそ)屋勤務の「わたし」。働くことの本質に思い至ります。開店前、陳列棚やレジに、おはよう、おはよう、と声をかける場面がすがすがしい。心に響く一編を見つけてみませんか。