高市早苗政権が「日本成長戦略」案で、2040年度までに370兆円超の官民投資を打ち出しています。経済財政運営の基本方針となる「骨太の方針」とともに近く閣議決定します。大企業の投資や軍需産業が経済成長をけん引し「強い経済」を実現するという“富国強兵”路線です。
■失敗続く直接支援
成長戦略は、17の戦略分野を指定し、62項目の「主要な製品・技術等」に官民共同で投資するというものです。AI・半導体、情報通信、航空宇宙、重要鉱物など、いずれも大企業が国の支援を求めている分野です。中小企業への直接支援に後ろ向きなのに、大企業には前のめりです。
大企業への直接支援は過去いくつも失敗しています。半導体メモリー事業を統合したエルピーダメモリは経営破綻しました。半導体産業については1980年代、政府がてこ入れして世界シェアを拡大したものの、米国と貿易摩擦が起きると不利な日米協定をのみ、衰退につながりました。官民共同ファンドの「クールジャパン」では540億円もの損失が出ています。
従来の成長戦略と比べて、新たに主要な柱に据えられた分野が「防衛産業」です。トップは「小型無人飛行機」です。ロシアによるウクライナ侵攻で大量に使われている「消耗品」であるから「早期に大量生産可能な国内生産基盤」を構築し、30年に8万台を供給するといいます。
大量のドローンを消耗する状況は戦争にほかなりません。そのために巨額の投資を行うなど、憲法で戦争を放棄した国がすることではありません。軍艦の「安定的」製造基盤の整備、軍民両用技術の開発も行います。
財政面では、官民投資に向け、国の予算に「『強く豊かな日本』投資枠」を設け、「単年度主義」にとらわれず、複数年度で支援することが「骨太」原案に明記されました。国の財政をさらに悪化させ、将来にわたって国民の負担を増やしかねません。
■長時間労働を推進
労働者には長時間労働が押しつけられます。成長戦略は、5年間で労働生産性を15%上昇させることを指標とし、裁量労働制の対象業務の拡大検討を盛り込みました。裁量労働制は、何時間働いても、あらかじめ決められた残業代しか支払われない、働かせ放題の制度です。
法定労働時間を超えた残業を合法化する「36協定」も条件緩和を検討します。どちらも「1日8時間、週40時間」という労働基準法の規制を形骸化させ、過労死の温床となっている制度です。
軍需産業や大企業ばかり栄えても経済は成長しません。大企業が利益を増やせば、一部が国民に恩恵をもたらすという「トリクルダウン」(したたり落ちる)の政策は、暮らしと経済を疲弊させ、日本を他国に比べても成長しない国にしてしまいました。
国内総生産(GDP)の5割以上を占めるのは個人消費です。消費を中心に経済を成長させるためには、賃上げや労働時間の短縮、社会保障の拡充が欠かせません。暮らしを温める政策こそが今必要な成長戦略です。

