「もう一度 会いたい」。思い人や先立たれた大切な人への恋しさでしょうか。商店街に飾られていた短冊にそう記されていました▼七夕の頃に降る雨は催涙雨(さいるいう)と呼ばれます。織姫と彦星の会えない悲しみや、再び別れる切なさからこぼれる涙になぞらえました。漱石も〈別るるや夢一筋の天の川〉と詠みました▼願い事には家内安全や穏やかな日常を望む気持ちが多くつづられていました。一方でこの時期は豪雨や土砂災害で犠牲になった人たちを追悼する催しが各地で相次ぎます。悲しみの記憶と教訓をつないでいくために▼静岡・熱海市の伊豆山地区を襲った、大規模な土石流災害から5年。大雨で崩落した違法な盛り土によって28人が犠牲になり、避難生活を余儀なくされている世帯は今も。苦しくつらい日々。被災者や遺族は「これは人災であり事件だ」と訴えています▼復興は計画通りに進まず、地域の絆も絶たれ、違法な盛り土の責任の所在も明らかになっていません。遺族や被災者らが盛り土の所有者や行政に対して起こした裁判は現在も続いています。被害者の会の瀬下雄史会長は「責任のたらいまわしが行われている」と▼人の手によって引き起こされた災害。気候変動による異常気象も野放図な経済活動が大きな要因になっています。短冊には災害も戦争もない、平和な世を求める言葉が目につきました。そうした危機がいっそう迫るいま、七夕の願いが重く響いてきます。
2026年7月7日

