日本共産党議長の志位和夫著『Q&A 戦争と平和 戦争への道をどう止め、平和をどうつくるか』(新日本出版社)が26日刊行されました。山口大学名誉教授・全国革新懇代表世話人の纐纈厚さんの書評を紹介します。
(写真)『Q&A 戦争と平和』 新日本出版社・税別1100円
混迷する国際社会と右傾化する国内政治。私たちの未来に暗い雲が垂れ込めているようだ。そんな時代だからこそ、道標となる語りに耳を傾けたい。その思いにしっかりと応えてくれるのが本書である。
それは議長就任後、委員長時代にも増して国際問題に真正面から向き合ってこられた志位さんと、青年を代表する形で民青同盟の酒巻眞世副委員長、小泉伊知郎中央常任委員とのQ&A方式でまとめられている。勘所を突いた絶妙かつ簡潔な質問に、実に丁寧かつ平易な語りで応答される志位さん。いま、私たちが何を課題とし、どう考えていくべきか。混迷の時代を乗り越え、未来を切り開く手がかりを与えてくれる。
イラン戦争ですさまじい軍事力を示した一方で、その限界をも露呈したアメリカ。世界で孤立し、米国内外でも批判にさらされている。アメリカの孤立は、日本の孤立にも直結する。
いまを生きる私たちは、これまでの平和の内実を問い直す時代に直面している。国際秩序が大国の横暴によって、次々と打ち壊されている。いまこそ、国際平和への道標を、どこにすえ置くのか、解答を求められているのだ。
「戦争いや」が大切
戦争や紛争は、大国の利害によって生じる。大国の利害をめぐる戦争において、その被害者となる数多(あまた)の人々が、恐怖と貧困の苦しみにさらされている。「戦争と平和」とは、大国の横暴と民衆の犠牲、という裏表の関係を示す用語でもある。志位さんは、そのことを常に念頭に置いて応答される。
人間の幸せも商売も、平和が護(まも)られてこそ成り立つ。そのことを、長い歴史のなかで学んできたはず。歴史の教訓を活(い)かす方途は、この一冊に込められた平和実現への思いのなかに凝縮されている。評者は、この一冊を「平和実現新書」とでも呼びたい衝動に駆られている。
ところで、本書を通底するのは、戦争をどのように捉えるのか、という問題の根源に関わる問いから出発する。志位さんは「戦争はいや」という、誰にも共有可能な純粋な感情を大切にすることから説き起こす。その純粋な感情を逆なでにする日本政治の現実を、次々と指摘していく。憲法9条改悪やスパイ防止法制定の動き、国家情報局の新設など。危険な動きをたくらみ、無法の戦争をやめさせようとする力は「戦争はいや」という純粋な感情である。
そして、志位さんは語る。この感情は、圧倒的多数の日本国民が持っているのだと。そこから平和実現の方途を求めることが大切だと。平和実現への思いは、間違いなく国民の多数が共有可能なものだとする志位さんの確信に満ちた思いが、随所にあふれている。
本書の中身を少し紹介しておこう。25項目にも及ぶ質問に四つの角度から、縦横に語り尽くされている。
第1の角度「トランプ大統領言いなりで平和はつくれるか?」では、ロシアのプーチン大統領と同様、結局はトランプ大統領も国際法を無視する暴挙に及んでいること、その現実に「日米同盟絶対」で思考停止に陥っている日本政府を厳しく批判する。
第2の角度「軍事的抑止力の強化で平和はつくれるか?」では、防衛費増額や日米同盟強化の理由に、抑止力の強化向上を持ち出す日本政府の抑止力論の誤りを指摘する。志位さんは抑止力で平和が達成できないこと、同時に抑止力強化が大軍拡を招いてきた事実に触れる。
第3の角度「中国との関係をどうするか?」では、昨今の日中関係の悪化の要因として、まず高市首相の台湾有事発言を取りあげる。高市発言は、自衛隊の対中国武力行使があり得るとしたものだ。その意味で極めて危険な内容であること、それゆえ、発言撤回こそが、「日中共同声明」に基づく両国関係の改善にとって必須の条件と論じる。
より具体的には、2008年の日中首脳会談で確認された「互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」との合意を尊重し、これにふさわしい行動をとることだとする。また、両国は「対話と協議」を通して問題を解決する、ことになっているとも。
そして、平和の枠組み創りとして、志位さんが長年取り組まれてきた東アジアの多国間平和のため、「ASEANインド太平洋構想」を前進させることを強調される。実に戦略性に富んだ未来に向けた平和構想である。
最後の第4の角度「憲法9条を守り、生かすことがどうして大切か?」では、平和実現の方途を提示する。平和憲法が生まれた歴史経緯から説き起こしながら、平和憲法を護り抜くことが、平和を護り抜くことに直結することを、あらためて強調する。
平和学習の必読書
こうした志位さんの真摯(しんし)なる取り組みは、大きな賛意を得つつある。全国革新懇が主催する「いま、『平和の準備』をどう進めるか」を共通テーマとする連続シンポジウムを、一昨年の東京、昨年の福岡、そして今年の仙台と、3年連続で開催してきた。その全てに志位さんが登壇され、議論を主導されてきた。各回に著名なゲストをお招きし、非常に活発な報告と議論を展開してきた。評者はコーディネーター役を担当させて頂いているが、これほど自由闊達(かったつ)な議論ができているのは、ひとえに志位さん自身に、平和実現の方途を知る豊かな戦略眼があるからだ。
本書で用意された四つの角度は、「戦争と平和」を論ずるうえで、最も重要な課題でもある。文字通りの平和学習の必読書。まさに待望の一冊である。
(こうけつ・あつし)

