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2026年6月29日

きょうの潮流

 被爆体験と性自認。それが生きる原点となりました。周りから否定されても自分を信じて▼あの日、長崎市の家で宿題の絵を描いていた10歳の少年は、突然の閃光(せんこう)と爆音に襲われました。「阿鼻叫喚(あびきょうかん)の交響楽がシンバルやティンパニーの乱打と共に、何十万の悲鳴の混声合唱(コーラス)を叫び、この世の果てまで届くよう助けを求めて哭(な)いています」(『紫の履歴書』)▼のちに被爆の瞬間をそう表現したのが、美輪明宏さんでした。「町が燃え、焼けただれた人たちが歩き回る姿を見た。そんな体験をするといやでも戦争を憎むようになります」。狂気の世界の経験は愛や芸術、理性に対する渇望へと変わっていきました▼終戦後に上京し、ホームレス生活から歌手の道へ。シャンソンをはじめ幅広い音楽に親しむ一方で、原爆孤児の「ふるさとの空の下に」や「祖国と女達(従軍慰安婦の唄)」といった反戦歌も▼日雇いで働く母をうたった「ヨイトマケの唄」は77歳で初出場したNHK紅白歌合戦でも披露し、大きな感動を呼びました。性的少数者であることを公にし、さまざまな困難と向き合ってきた美輪さんの人生相談は幅広い世代から人気を集めました▼若者たちに希望を語り続けてきた91年の人生。訃報を伝えた公式サイトにはこんな言葉が添えられています。「美輪の願いは、この世からあらゆる差別、偏見をなくし、すべての人が平和で明るく楽しく生きていける、共生社会の実現でした」