6月も終わりに近づきました。2006年になくなった詩人、茨木のり子さんの作品に「六月」と題された1編があります。初夏の暑さを感じさせる夕暮れの景色の中で、人びとがゆったりと息づく、美しい村や街を思い描いた小編です。国語の教科書にも掲載されてきました▼茨木さんは、戦後日本の代表的詩人の一人で「現代詩の長女」とも呼ばれます。1926年の6月生まれ。ことしは生誕100年です▼よく知られている作品の一つが「わたしが一番きれいだったとき」。戦時下に青春時代を過ごし、敗戦を迎えた自分自身を惜しみ慈しむとともに、だから長生きをすることに決めたと言い切る。ある意味すがすがしさを感じさせます▼50歳になってからハングルを学び始めました。韓国をしばしば訪れて現地の人たちとの交流を楽しんでいたようです。一方で、強制連行された北海道で13年間の逃亡生活を送った中国人のことを書いた長編の詩もあります。日本の侵略戦争とその被害者に真摯(しんし)に向き合いました▼没後20年でもあります。存命なら今の政治や社会にどんなまなざしを向けたか。きっと辛辣(しんらつ)かつユーモアを感じさせる詩をつむいでくれたことでしょう▼「六月」は同じ時代を生きる人と人とのつながりが「鋭い力となってたちあらわれる」と希望を感じさせる言葉で結ばれています。分断があおられている今、社会を前に進める連帯こそが未来を切りひらく力になります。
2026年6月28日

