見るたび発見があります。濱口竜介監督の新作映画「急に具合が悪くなる」です▼舞台はパリ郊外の介護施設。物語の核となるのは、ユマニチュードと呼ばれるケアの技法です。そこでは認知症の人も感情や意思を持つ個人として扱います。理想の介護を追求する施設長のマリー‖ルーは、この技法を取り入れますが「実情に合わない」と現場から反発されます▼問題の根源に何があるのか。偶然出会ったマリー‖ルーと日本人の演出家・真理は対話を重ね、構造の正体を探ります。そして資本主義の社会システムが、人間を人間として扱う余裕や時間を奪っていることを解き明かしていきます▼「少子高齢化は資本主義の必然」というせりふがあります。本来、私的な時間は交流や休息に費やすべきものなのに、すべてが資本主義に組み込まれ、子どもを産んで育てる時間や余力はなくなる、と。キーワードは「時間」です▼映画で展開する資本主義論は原作にはないオリジナル。監督は本紙日曜版6月21日号で、日本の映画界の労働時間は「人間の回復を前提としていない」と告発しています。その結果、業界から人が離れていっている、と。初の海外撮影で日本の遅れを実感したようです▼一方、主演2人が第79回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したことを自らの手柄のようにXに投稿した高市早苗首相。「稼ぐ文化」の大号令で現場を追い詰めているのは誰なのか。何をかいわんやです。
2026年6月27日

