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2026年6月25日

主張

個人情報保護法案
許されぬ本人同意抜きの提供

 個人の病歴など非常に機微な情報が、氏名や住所つきで本人の同意なく企業に提供される―国会でいま、採決・成立が狙われている個人情報保護法改定案は、基本的人権であるプライバシーを侵害する重大な問題をもちます。

 現行法は、医療機関を含む事業者が、保有する個人情報を第三者に提供する場合、本人の同意を得ることが原則となっています。しかし、これまでの改定で、匿名化したり個人が識別できないようにすれば、本人の同意は不要ともされてきました。

 それに対し今回の改定案は、特例で、AI開発や統計の作成が目的ならば、「要配慮個人情報」を名前、住所を匿名化せず“生”のままで本人の同意抜きに第三者に提供することを可能にします。

■機微な情報AIに

 要配慮個人情報とは、病歴のほか、思想信条・宗教、犯罪歴、犯罪被害歴、人種、社会的身分などの情報です。病歴には、精神疾患や遺伝病、性病、認知症、遺伝情報、身体機能障害の情報などが含まれます。これらは、差別や偏見などの不利益が生じないよう特に注意を要するとされているものです。

 提供を受けた者が個人情報を用いて作成したAIや統計では個人は識別されませんが、作成前の生のデータは残っており、情報流出、不正利用のリスクがあります。

 さらに現在のデジタル社会では、膨大な情報をコンピューターが分析・照合することで、個人が識別できない統計情報からも個人が推測、特定され(=プロファイリング)権利の侵害につながる現実的な危険があります。

 政府はこれらのリスクを防ぐ担保措置について、不適正利用の禁止やガイドラインを挙げています。しかし、欧米に比べて緩く弱いものです。

 今回の改定は、AI開発を求める経団連、日本IT団体連盟など財界の強い要望を受けたものです。一方、日本医師会は法改定の方向について「極めて危険」とし、全国保険医団体連合会は廃案を強く求めています。全国消費者団体連絡会も「強い懸念」を表明しています。

■技術進歩にも逆行

 実名、住所付きの個人情報が本人の同意もなく企業などに提供されること自体が国民に不安を抱かせます。さらに情報流出などが起きれば取り返しのつかない被害となり、不信は決定的となります。

 19日の参院デジタルAI特別委員会の参考人質疑で、医療情報に携わってきた京都大学付属病院の黒田知宏教授は、新たな治療法の開発にとって、実名の提供を可能にする今回の法改定はまったく必要ないと指摘。かえって国民や医療機関の不信を招き、医療データの利活用を停滞させ、AI開発などで諸外国に後れをとる結果になると警告しました。

 利潤追求のためデータの利活用を求める事業者優先では、国民の権利利益は守れません。経済界の要求に従って個人のプライバシーを危険にさらし、個人を特定しかねない法改定は許されません。個人情報保護法の本人同意の原則にさらなる穴をあける法案は廃案にすべきです。