鮮烈なゴールは世界に向けたアピールでした。みずからの存在や誇りを示す。「われわれは、ただ参加するために来たのではない。世界と競い合うために来たんだ」。選手や監督は口々に強調します▼アフリカ大陸西端の大西洋上に浮かぶ島々からなるカボベルデ。聞き慣れないこの国が初出場のサッカーW杯で躍動しています。強豪のスペインやウルグアイを相手に互角の戦い。初の得点や全員が体を張って守る姿に涙するサポーターも▼ポルトガル語で緑の岬を意味する島国には滋賀県ほどの全面積におよそ60万人がくらします。15世紀の発見後ポルトガルによって植民地化され、奴隷貿易の中継地として開発されました▼以来アフリカや南北アメリカ、欧州を行き交う商人や文化の交差点に。ようやく独立を果たしたのは1975年。サッカーは若者たちのアイデンティティーの一つだといいます▼今回のW杯にはアフリカから最多となる10カ国が参加。そのすべてが植民地支配や奴隷制の影響を受けてきました。先日開かれた国際会議ではアフリカとカリブ海の諸国がかつて奴隷貿易を行った国々に対して謝罪と賠償を求めました。歴史的な過ちを正し、平等や繁栄の共有、共通の人間性に基づいた未来を築くためにと▼アフリカにおけるサッカーは抑圧と差別に抗(あらが)い、人々を幸せにするための戦いだといいます(『不屈の魂 アフリカとサッカー』)。長く渇望した自由の叫びとともに。
2026年6月24日

