「戦争する国づくり」の指針・安保3文書の改定に向けた自民党の提言は、ロシアによるウクライナ侵略が発生してから4年超と長期化していることを踏まえ、日本の国土の戦場化を想定し、年単位の長期戦を戦い続けるための「継戦能力」の強化が重要としています。ところがウクライナで原発が攻撃の標的となり、電力供給の途絶や放射性物質の放出など事故の危険が深刻化している実態(年表)には一言も触れていません。
ウクライナは侵略を受ける以前、国内4カ所15基の原発で自国電力の約60%を産出するなど原発に依存していました。ロシアは、ウクライナへの侵略開始直後の2022年2月、1986年に大規模事故を起こし閉鎖中のウクライナ北部チョルノービリ原発を一時占拠。同原発に隣接する使用済み核燃料貯蔵施設をドローン攻撃し建物の一部を損傷させるなど、放射性物質飛散の危険を高めています。
またロシアは、22年3月に、欧州最大のウクライナ南部ザポリージャ原発を占拠し、武器や弾薬を運び込むなど同原発を軍事基地化。奪還を目指すウクライナとの攻撃の応酬によって、繰り返し外部電源が喪失し冷却システム停止の危機に陥るなど危機的状況が続いています。
日本では11年3月の東日本大震災で福島第1原発が世界最悪レベルの事故を起こしたにもかかわらず、政府は再稼働・新増設を推進。現在、全国で15基の原発が再稼働しています。
さらに政府は、昨年2月に閣議決定したエネルギー基本計画に「原発の最大限活用」を明記。今月5日、経済産業省の審議会「原子力小委員会」で原発の建て替えについて40年代までに約2~5基、50年代までに約11~14基とする目標案を提示するなど、戦時で標的となるリスクが顕在化しているなかでも、原発回帰を強行しています。
現行の安保3文書では、「抑止」が破れ、日本の国土が戦場になることを想定していながら「原発は軍事攻撃の標的になる」というウクライナの教訓を完全に無視。それどころか、原発再稼働を進めて自らリスクを増やす―。支離滅裂と言わざるをえません。
■ウクライナ情勢下での原発をめぐる主な動き
2022年2月 ロシア、ウクライナへの侵略開始。チョルノービリ原発を一時占拠
3月 ロシアが欧州最大のザポリージャ原発を攻撃し占拠
2023年6月 ザポリージャ原発が冷却水として取水するダムが爆破で決壊
2024年4月 ザポリージャ原発でドローン攻撃
2025年2月 ロシアがチョルノービリ原発を攻撃。放射線物質を封じる建屋カバーが損傷
8月 ウクライナがロシアのクルスク原発をドローン攻撃。火災発生で原子炉稼働能力が低下
2026年5月 ザポリージャ原発にドローン攻撃。タービン建屋の壁に穴
6月 ザポリージャ原発に送電する変電所が攻撃を受け、侵略以降19回目の外部電源喪失

