大声を出して騒ぐ。目をそらして、いきなり動く。背中を見せて全速力で逃げる。石を投げる、棒を振り回す――やってはいけない行為だといいます。もしもクマと出合ったときに▼市街地や繁華街に現れ人間を恐れない「アーバンベア」の出現。急激に変化する人との関係。クマの生態に詳しい東京農工大大学院の小池伸介教授監修の『さまようクマ、変わる森』は新たな局面への対処法を示します▼1980年度は10人、死亡者ゼロだったクマによる人身被害の数は昨年240人近くにも達し、死亡者も10人超と過去最悪。今年はさらに増えそうな勢いも。いまやクマ問題は山村だけでなく、都市部にも波及しています▼日本には現在およそ1万2千頭のヒグマ、4万2千頭のツキノワグマが生息していると推計されています。付き合いの歴史は古く神聖な存在としたアイヌや狩猟を生業(なりわい)としてきたマタギの文化を生み、長く共生の道を歩んできました▼しかしいま、里地里山の荒廃や耕作放棄で荒れた農地をはじめ人間社会の変化が本来自然の中でくらすクマとの境界線をあいまいにしています▼クマたちが突きつけた最も大きな問題点は「国土の管理」を放棄してしまった日本のあり方ではないか、と小池教授。経済第一や利益最優先、人間だけを中心にした世界観。いま起きている多くの野生動物にかかわる問題はその副作用である、との指摘は日本社会のゆがみをあぶり出しています。
2026年6月18日

