競技場の観客の手には異なる国旗が握られていました。片手に星条旗、もう一方にはイラン国旗。二つの旗を選手に向かって一心に。4年前、サッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会の試合後のことでした▼長らく対立関係にある両国だけに当時も緊迫ムードが漂っていました。しかし杞憂(きゆう)でした。1次リーグの敗退が決まりピッチに座り込むイラン選手。そこに歩み寄って言葉をかける米国の選手。試合前日にイランの監督が口にした「サッカーが勝利した日」の風景がそこにありました▼W杯北中米大会が開幕しました。カナダ、米国、メキシコの初の3カ国共催の大会に48チームが集います。米国はイランと戦争を続けています。そんな国が大会を開く異常さ。資格が問われるのは当然です▼出場国のイランは、米国内にベースキャンプを希望していたものの、米政府は拒否。チームスタッフの何人かが入国できない不当な仕打ちも受けています▼あまりに政治的で差別的な対応ながら、国際サッカー連盟も抗議した形跡はありません。それもそのはず。トランプ米大統領に「平和賞」を贈り、ご機嫌伺いした人が会長ですから▼W杯チケットは高額で庶民は手が出ない。移民の暴力的な取り締まり、海外からの入国者も大幅に制限する。何もかもが異例、異様です。それでも選手、サポーターの心がつながる平和な景色をみたい。政治や対立を越える本来のW杯を取り戻すために。
2026年6月12日

