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2026年6月10日

主張

国旗損壊罪自民案
個人の内心を罰する違憲立法

 憲法が保障する「思想・良心の自由」や「表現の自由」を侵害する違憲立法です。

 自民党は、日本国旗を傷つける行為を罰する「国旗損壊罪」を創設する議員立法の条文案をまとめました。日本維新の会などとの調整の上、国会提出を狙っています。「国旗を大切に思う国民感情を保護する」ことを目的にして違反者に刑罰を科します。個人の内心に踏み込み、恣意(しい)的な摘発を可能にします。立法化の企てはやめるべきです。

 自民党の条文案は「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者は、二年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する」と定めます。そうした行為を撮影した動画を交流サイト(SNS)などに投稿することも同じように罰します。

■立法の必要性なし

 自民党の説明資料は立法の必要性について、国内でも国旗損壊行為が確認されているとしています。しかし、その例として挙げているのは、1987年と2008年に起きた2件のみです。その上で「そのような事案の発生を将来に向かって抑止する」としています。つまり、現在は損壊行為は確認されていないということです。

 外国国旗の損壊罪はあるが日本国旗にはないともしていますが、同罪は円滑な外交のための規定とされ、目的が異なります。いずれも立法の根拠にはなり得ません。

 条文案は、処罰の対象となる国旗損壊行為に該当するかどうかの判断について「行為の外形、周囲の状況その他の客観的な事情を総合的に勘案して行う」と規定しています。説明資料では、意図や目的など「個人の内心を詮索せず、外形的・客観的に判断」するとしています。

 しかし、国旗に対する行為は、個人の思想など内心に基づくものです。行為を罰することは、内心を罰することにほかなりません。

 しかも「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させる」という判断の基準は極めて曖昧で、基準がないのも同然です。捜査機関による恣意的な取り締まりを可能にします。

 メディアも「国に対するやむにやまれぬ抗議や批判を、国旗へのアクション(行動)を通じて意思表示することは、政治的表現の最たるものだ。それを罰するとなれば、政治的表現自体を抑圧し、封じ込める象徴ともなろう」(「朝日」5月22日付社説)と指摘しています。

■歴史の教訓に逆行

 権力が個人の内心に踏み込むことは、国民の思想統制によって侵略戦争に突き進んだ戦前の歴史を想起させます。「国旗損壊罪の新設は国家主義の下、国民に多大の犠牲を強いた先の大戦の反省を踏まえているとは到底言えない」(「東京」5月27日付社説)との批判は当然です。

 国旗損壊罪の創設は、高市早苗首相の肝いりで、「戦争国家」づくりの一環です。維新との連立合意書にも、今国会での制定が盛り込まれています。

 立法化を許さない運動と世論を大きくしていくことが必要です。