2月末に発表された第13回星新一賞(日本経済新聞社主催)の一般部門受賞4作品のうち3作がAI(人工知能)を使用していたとして物議を醸しています▼同賞は2013年の設立時から「人間以外(人工知能等)の応募可」とされていましたが、今回、部分的ではなく全面的にAIに書かせた作品も受賞に至ったことで文学とは何かが改めて問われています▼文学担当記者にとって、著者インタビューは大切な仕事の一つです。作品は作家の人生の結晶であり、そこに込められた傷や痛み、孤独、怒り、葛藤、さらには幸せの実感や世界への信頼、未来の希望について取材し、作品が読者の血肉となることを目指します▼AIの文章がいかに流暢(りゅうちょう)で論理的でも、私たちを励まし救うのは、苦悩する人間の書かずにはいられないという切実な思いから湧き出た言葉ではないのか▼そんなことを考える日々、東京・調布市文化会館たづくりで開催中の武者小路実篤没後50年記念の展覧会を訪ねました。花や野菜の絵に言葉を添えた素朴で温かい書画の数々。「天に星 地に花 人に愛」「和而不同(わじふどう)」「静坐観群妙(せいざかんぐんみょう)」。自然と人間の美しさをたたえ、違いを認め尊重し合うこと、心を澄まして真実を見極めることを現代に呼びかけるような言葉です▼一人ひとりが自分らしく十全に生きられる理想郷を模索し「新しき村」をつくった作家と向き合うひととき。人間が手放してはならないものを思いました。
2026年6月7日

