ハイライトは試合後の光景でした。両校の選手と学生たちが一緒になってエールを送り、校歌を歌い合う。球場全体に万感の思いがこみ上げました▼両選手が交互になって並んだ記念写真には、ともに野球に青春をささげた仲間としての絆がありました。交わした誓い。それは「次は戦場で会おう」でした▼太平洋戦争のさなか、野球が敵国スポーツとして弾圧されていた1943年。早稲田、慶応の関係者の努力で、のちに「最後の早慶戦」と呼ばれる試合が実現しました。その5日後、選手たちは出陣学徒壮行会に参加。それぞれの戦地に赴きました▼先の日曜日、満員の神宮球場で早慶戦が行われました。天皇親子の観戦のもとで。学生時代に「最後の早慶戦」の場にいた人から話を聞く機会があったという早大の小宮山悟監督は、戦後をキーワードにして、この試合の意義を選手に伝えたと▼「最後の早慶戦」は映画にもなり、関係者の証言などをまとめた『学徒出陣 最後の早慶戦』は今年復刊されました。両校が所属する東京六大学野球連盟も100年の時を刻み、過去の歴史に思いをはせています▼「最後の早慶戦」保存会会長の中野雄三郎さんは「平和は先人の犠牲の上に成り立っている」として、「これは野球や早慶だけの物語ではない。日本の歴史として、平和の大切さを次の世代に伝える運動にしたい」と呼びかけています。ひたむきに白球を追える今の幸せをかみしめて。
2026年6月5日

