5月に成立した国家情報会議設置法により、自治体が若者の本人同意なしに自衛隊に提供した名簿の行方がうやむやになるのではないか―。そんな懸念が広がっています。(染矢ゆう子)
(写真)若者の個人情報を守るとりくみは各地で広がっています。写真は自衛隊への名簿提供は憲法違反だと国と岐阜市を相手取り、裁判を起こした高校生の弁護団と支援者ら=3月26日、岐阜市
東京都新宿区では今年度から、自衛隊に対し18歳の住民の個人情報を、あて名シールの形で提供します。個人情報は自衛官募集に使われます。東京23区内では4番目です。これまでは自衛隊が名簿を閲覧して書き写してきました。
同区は4月15日、ホームページ上でその旨を公表し、提供を希望しない対象者は除外申し出を6月5日までにすることも明記しました。
第三者機関設けず
公表したページにたどりつくには、トップページから「その他区政情報」→「新宿区役所・組織」→「組織案内」→「地域振興部・地域コミュニティ課」と自衛官募集と何の関連もないページを4段階も下る必要があります。ようやくページにたどりついてもまだ確認できません。並んでいるお知らせメニューの中の一つ「自衛官募集にかかる対象者情報の提供について」を選んで初めて見られます。
(写真)平井哲史弁護士
「これでは周知とはいえない」と話すのは自由法曹団幹事長の平井哲史弁護士です。「そもそも個人情報を提供してよいかを個別に聞いてから提供するべきです」
5月末に成立した国家情報会議設置法は、各機関が持っている情報を同会議に提供させることも目的の一つです。同会議の活動をチェックする第三者機関は設けられていません。
「今は対象になっていませんが、将来的に住民基本台帳の情報が国に吸い上げられることもありえます。別の組織がもっている個人情報が防衛省・自衛隊にくることもありうるし、防衛省がもっている個人情報が何に使われるのか誰も検証できない」と平井さんはいいます。自衛隊への個人情報提供の除外を申請した人が特定され、旧動燃で行われたような違法な昇格・昇給差別が就職の際などに行われる可能性もあると指摘します。
「恐怖しかない」
日本共産党新宿区議団は5月に同区が今年度から「本人の同意なく個人情報を自衛隊に提供します」と伝えるニュースを出しました。読んだ「赤旗」読者からは「わが家は(子どもの)情報提供を拒否しますが、区の情報を見逃さない保証はない。恐怖しかありません」などの声があがりました。ニュースを転載した川村のりあき区議のXの投稿は10日間で10万人に表示されました。
川村区議にはXで情報提供もありました。「埼玉もです。突然自衛隊員が家庭訪問の勧誘に来て驚きました。息子が高3の時です。幼なじみの家には来なかったから、母子家庭狙い撃ちなのかと思いました。『個人情報はどこから?』と尋ねると『市役所の情報は利用できることになってるんだよ』とニコニコしていたそうです。親の働く時間が狙われました」
6月議会に向け、2人の弁護士が中心になり、「本人の個別同意なく自衛隊に募集対象者の個人情報を提供しないよう求める陳情」を提出する予定です。同区では2018年度に高齢者の名簿を警察に提供しようとしたところ、52%が拒否したため、翌19年度から中止になりました。
平井さんは言います。「自衛隊に個人情報を提供しないよう求める動きが多くの自治体で起きれば『戦争反対』『改憲反対』の声をさらに強めることにつながります」

