「桃花鳥(とうかちょう)」とも呼ばれます。羽の桃色から名付けられたと考えられ、古くは日本書紀や万葉集にも記されます。かつて身近な鳥として愛され、日本各地の空に羽ばたいていたトキです▼明治期からの乱獲などで数が激減。野生のトキは佐渡島を最後に絶滅しましたが、中国から贈られたトキが繁殖。2008年に佐渡島で初の放鳥が行われ、今では500羽ほどが生息しているとみられています▼本州最後の生息地だった能登の空に再びトキが舞い上がりました。先月末、羽咋(はくい)市で放鳥が実現。長年トキの保護活動にとりくんできた同市の村本義雄さん(101)は「能登に住みついてほしいという思いで見送った」と▼トキを復興のシンボルに見立てる向きもありますが、現実は厳しい。地震で大きな被害をうけた珠洲市は人口減少率が3割超と全国で最も高く、他の市町村も急激な人口減に。そこには住みたくても住めない苦悩があります▼仮設住宅の入居期限がきているのに災害公営住宅にも入れない。生業(なりわい)の柱となってきた農林業や漁業にも展望がみえず、国や県からの支援も乏しい。長く支援活動を続け石川県知事選にも立候補した黒梅明さんは訴えます▼黒梅さんが作詞した「朱鷺(とき)が舞う」は多くの協力によって曲がつき全国に広まっています。「トキが舞う能登は人間にとっても優しい場所であるはず。最後までここで生きたいと願う住民にとって、トキは希望でもあると思います」
2026年6月3日

