再審制度見直しの出発点は、冤罪(えんざい)被害者の速やかな救済の実現と国家による人権侵害を許さないことです。そのためには法改正で、証拠の幅広い開示と検察官の不服申し立て(抗告)禁止の二つを実現することが不可欠です。
今国会では、法務省・検察がまとめた政府提出法案と、自民党を含めた超党派の議員連盟がまとめ、日本共産党・中道改革連合・チームみらいの3党が共同提出した議連案が同時に審議されています。
しかし政府案は、改正に求められる二つをともに欠き、法改正の目的に逆行しています。冤罪被害者と国民の声に応えるためには議連案の内容を実現することが必要です。
■全面的証拠開示を
袴田事件、福井中学生殺人事件など多くの事件で再審無罪の決め手となったのは、警察や検察が隠したり、未提出だった証拠が新たに開示されたことです。捜査機関が持つ証拠を全面的に開示させられるかどうかが決定的です。
そのために議連案は、再審請求者が求めれば、裁判所は検察官に対し、再審請求側に直接、証拠を開示するよう命じなければなりません。検察が持つ証拠とその一覧表、警察が検察に送った証拠や書類の一覧表のほか、警察が手元に留め置いて検察に送らなかった押収物なども対象にします。再審請求理由に直接・間接に関連すると認められるものを広く対象とします。
それに対し政府案が設けるのは裁判所への証拠の提出を命じる制度で再審請求側への開示制度になっていません。
裁判所が提出を命じる対象も、再審請求理由との関連性や必要性の程度からみて「相当」と認めた証拠に限定しています。再審請求理由との関連を判断して証拠を出すか決めるのは、実質的には検察です。過去には、検察が「関連性がない」として明らかにしなかった証拠が後に開示され、再審無罪につながった例があります。
検察が持つ証拠の一覧表が再審請求側へ開示されなければ、無罪につながる証拠が出されないままになる可能性があります。しかし政府案では、再審請求側は証拠の一覧表を見ることが制度化されていません。
また政府案は、開示された証拠の公開を罰則付きで禁じます。無罪を勝ち取る力になってきた支援活動や報道を萎縮させ、冤罪救済に逆行します。国民の知る権利を妨げるもので、許されません。
冤罪を晴らすのに長い年月がかかる重大な要因が、再審開始決定への検察官の抗告です。抗告の全面禁止が必要であり、議連案はそれを盛り込んでいます。
■抗告禁止に抜け道
一方、政府案は当初案から修正され抗告を原則禁止としたものの、検察が「決定が取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある」とすれば抗告が可能です。抗告禁止の大きな抜け道です。
過去の冤罪事件への真摯(しんし)な反省のない検察の主導でつくられた政府案は、検察の従来のやり方を維持しようとするもので、被害者救済になりません。証拠の全面開示と抗告禁止という議連案の立場が必須です。

