防衛省は南西諸島での激しい戦闘を想定し、自衛隊那覇病院(那覇市)で有事には病床を4倍に増やすなど、全国の主要な自衛隊病院で病床を大幅に増やす計画であることがわかりました。計画は、実際に多数の自衛官が死傷することを前提にした戦争準備が着実に進んでいることを示しています。
(写真)2025年の日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」の一環で、那覇病院で行われた共同衛生訓練の様子(陸上自衛隊西部方面隊のXから)
同省は2026年度予算に自衛隊病院の機能強化に必要な整備費を計上。このうち自衛隊那覇病院では、平時の50床から有事には200床にまで拡張できるようにするため、病棟の建て替えを計画(着工時期は未定)しています。また、麻酔科と精神科も新設。重傷者を県外に搬送するための麻酔や、過酷な戦場で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した隊員への対処が目的とみられます。
防衛省は、宮古島や石垣島、与那国島など先島地域が最前線になると想定。前線の「第一線救護」や野戦病院で治療し、那覇病院に搬送するほか、重傷度に応じて九州や本州に後送する「シームレスな医療・後送態勢」を強化しています。
これに伴い、自衛隊福岡病院(福岡県春日市)は平時の200床から有事には350床まで増やせるようにし、救急科と脳神経科を新設。自衛隊横須賀病院(神奈川県横須賀市)は平時でも100床から120床に増やし、有事には200床にまで拡張できるようにし、救急科と放射線科、総合診療科を新設します。
沖縄では戦傷者を想定した衛生訓練が繰り返されており、昨年9月の日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」(RD)では、那覇病院で自衛隊と米海兵隊の医師が共同で治療・搬送する訓練を実施。今月行われるRDも宮古島と与那国島で患者を治療して普天間基地(宜野湾市)に輸送する訓練を行います。念頭にあるのは、「台湾有事」など米中の軍事対立に自衛隊が動員され、多数の負傷者が出る事態です。
さらに、防衛省担当者は、各地の自衛隊病院が満床になった場合、「民間の医療機関に協力してもらうことも検討している」と回答。安保3文書改定に向けた自民党の提言案は、多数の隊員の負傷に備え「官民連携による病床・医療人材の確保等を積極的に進める」と明記しています。
15年に成立した安保法制では、日本が攻撃を受けていなくても、集団的自衛権の行使を可能にする「存立危機事態法」の第6条に基づき、医療機関を「指定公共機関」とし、軍事動員することが可能です。
特に沖縄では住民を直ちに県内で避難させる手段はなく、実際に西南諸島で有事となれば住民にも多くの負傷者が出る可能性がありますが、医療従事者が軍事動員され、病床まで奪われる危険があります。
南西諸島の戦場化を想定した、自衛隊員への医療・後送態勢のイメージ図(防衛白書から)

