米軍の戦争に参戦した自衛隊で多数の戦死者が出ることを想定し、遺体の取り扱い専門家である葬祭業者の全国団体と陸上自衛隊が協力協定を結び、地方レベルにまでその態勢づくりを拡大させていることが31日、本紙が情報公開請求で入手した防衛省の内部文書等から判明しました。政府が「台湾有事」を念頭に軍拡を進める中、想定される多数の戦死者に対応するために、地方や民間を巻き込んだ全国的な動員体制が進められていることがわかりました。(矢野昌弘)
(写真)日米共同訓練「アイアン・フィスト」の陸上戦闘訓練に参加する陸上自衛隊員。首の白いひもは「戦死」したことを示しています=3月6日、沖縄県金武町
本紙が入手したのは、2025年1月に陸上幕僚監部厚生課が作成した内部文書や協定書です。
内部文書は、昨年2月に行われた全日本葬祭業協同組合連合会(全葬連)と陸上幕僚監部(陸幕)の協定締結式に向けて作成されたものです。協定の目的は「各種災害並びに武力攻撃事態等及び存立危機事態が発生した場合に備え」ることと明記。「存立危機事態」は、日本が武力攻撃を受けていなくても米軍などが海外で起こした戦争に参加することを意味します。
全葬連が陸自に協力する内容は、「納体袋、棺(ひつぎ)、保冷資材等の確保」や「ご遺体の安置・保管、還送」です。さらに戦闘による遺体の著しい損傷を前提とした「遺体の修復における遺族対応」や「エンバーミング(遺体衛生保全)」に関する専門業者による技術的講義まで盛り込んでいます。
こうした「有事」態勢の構築は、陸自の中央組織だけではありません。内部文書では陸自トップの陸上幕僚長への「成果報告」として「地方協定の促進、訓練等での連携等」と明記し、地方の方面隊でも締結を促していくとしています。
実際に、昨年6月には陸自東北方面隊が全葬連東北ブロック(幹事・宮城県葬祭業協同組合)との間で協定を締結していました。陸幕の協定と同様に遺体修復やエンバーミングといった生々しい協力内容が盛り込まれています。
東北地方の葬祭業者は11年の東日本大震災で、火葬能力を超える多数の犠牲者が出る中で遺体の取り扱いに従事しました。宮城県葬祭業協同組合は自力で棺1万基を用意し、自社の葬儀会館の営業を止めて臨時の遺体安置所として提供しました。「仮埋葬(土葬)」や、仮埋葬した遺体の改葬に対応した経験があります。
岸田文雄内閣が22年に閣議決定した「安保3文書」は、「現在の自衛隊の継戦能力は、必ずしも十分ではない」として、「戦傷医療における死亡の多くは爆傷、銃創等による失血死」「人的損耗」を重視。「(継戦能力のために)有事において危険を顧みずに任務を遂行する隊員の生命・身体を救う組織に変革する」としています。
高市早苗首相はこの「安保3文書」を年内に改定し、「年単位」での継戦能力を高めようとしています。こうした中、「安保3文書」が想定する南西諸島での戦闘が、自衛隊内で対応しきれないほど多くの戦死者を出し、民間まで動員する大規模な戦争となる危険があることを、この協定は示しています。
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高市政権がすすめる「戦争国家づくり」の実相を、アメリカの戦略、自衛隊の実態、国民生活への影響など多角的に浮き彫りにします。
全葬連との協定について書かれた陸上幕僚監部厚生課が作成した文書。「陸幕長への成果報告(地方協定の促進、訓練等での連携等)」と記されています

