(写真)国連本部の総会議場で行われた最終日のNPT再検討会議=22日、ニューヨーク(洞口昇幸撮影)
4月27日~5月22日まで開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議は、成果文書を採択できずに閉幕しました。
その最大の原因は、日本共産党の志位和夫議長の談話(23日)が述べているように、「核保有国がNPT第6条の義務をサボタージュし、再検討会議でも、その義務に反する立場に固執しつづけたこと」にありました。
非核国強く批判
会議の成果文書はコンセンサス(全会一致)で採択されることになっています。最終日に提示された案文の、イランの核保有を認めない、とする文言をめぐって、削除を求めるイランと米国が対立し、コンセンサスができなかったと言われています。
しかし、文書が不採択になったことについての各国の演説は、問題の真の焦点を浮きぼりにしました。
非核国は、文書採択ができなかったことを遺憾としながらも、核軍縮に向き合おうとしない核兵器国の態度を、これまで以上に厳しく批判したのです。
アフリカグループを代表したナイジェリアは、「われわれは不満を持っている。第6条の義務の履行に進展が見られないことは、深刻な懸念だ」と述べ、エジプトも、核兵器国に「第6条を実施する政治的意思が欠けていることに失望する」と強い言葉で批判しました。マレーシアは、不拡散が維持される一方、核軍縮がすすまない「不均衡が続いていること」に、強い懸念を表明しました。
一方、米国は「NPTは核不拡散の条約であって、核軍縮条約ではない」などと述べ、核軍縮を軽視する姿勢をあらわにしました。
文書不採択の政治的な核心が核兵器国の第6条に対する不誠実な態度にあったことは明白です。
廃絶を「先送り」
(写真)NPT再検討会議を前に核兵器廃絶を訴えて行進する被爆者、市民ら=4月26日、ニューヨーク(柴田菜央撮影)
実際、核兵器国は文書案で、第6条の義務を薄めようと画策しました。
13日に示された成果文書案(改訂1版)は次のように明記していました。「すべての締約国が条約第6条に基づき、核軍備競争を停止し、核軍縮に関する効果的措置についての交渉を、誠実に行う法的義務を負っていることを再確認する」「2000年と2010年の再検討会議で行われた約束を完全に履行する」。これは、第6条の履行を求めた、日本共産党の要請内容と合致するものでした。
ところが核兵器国は、これらの骨抜きをはかろうとしました。18日に行われた草案(改訂2版)の討議で、ロシアは「核兵器の完全廃絶」を、未来永劫(えいごう)に先送りする「究極的かつ完全な廃絶」に変えることを提案。第6条に関する段落の大部分を削除することを要求しました。中国もこれを支持するとともに、核軍縮は「強化され、減少することのない安全保障の原則に基づくべき」だと、核兵器廃絶に条件を付けました。米国とフランスも、第6条の履行について「緊急」の文言を削除するよう求めました。これも廃絶の「先送り」を意図したものでした。
多くの非核国がこれに反発したことは言うまでもありません。そもそも「究極廃絶」論は2000年の再検討会議で否定された議論であり、後退は許されません。メキシコは、この条約に加盟した根本的な理由が6条の実施、核軍備の撤廃にあったのに、その実現に「これからどれだけの時間がかかるのか」と批判しました。
18日に議論された改訂2版でも、改訂1版に続き、第6条履行の一環として、2000年、2010年の再検討会議での合意の「有効性を再確認」し、その「実施」の文言が維持されていました。しかし、米国は、「過去のすべての約束を受け入れることはできない」などと述べ、修正を要求。ロシアも「再確認」を、思い返すだけの「想起」の文言に変えるよう求めました。
非核国はこれに反対し、ブラジルは、合意した「行動計画」の実施を妨げるような修正は支持できないと主張しました。
なお、改定2版では、「核共有」や「核抑止」への「懸念」を表明する部分もありましたが、核兵器国はつよく反対し、また、非核国に対する核兵器の使用とその威嚇を禁じる文言も弱めようと画策しました。
改訂2版には「核兵器のいかなる使用も、破滅的な人道上の結末をもたらすことを認識する」という2010年再検討会議の文書にもとづく文言が明記されていました。これもわが党の要請と合致するものでした。
ところが核兵器国と一部の同盟国は、人道的影響に関する部分の削除を求めました。米国は、「使用」の部分を「核戦争が全人類にもたらすであろう壊滅的な被害」に変えることを要求。これは、ヒロシマ・ナガサキ、ビキニを含む世界の核実験被害を、将来起きるかもしれない「核戦争」にすり替える暴論です。
ロシアは、「(非人道性の議論を)保有国に圧力をかけるために悪用している」と言い、核兵器の影響は「1945年の核兵器使用直後から明らかだった」として、あらためて2010年の合意を持ち出す必要はないと主張しました。フランスもこれに同調しました。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞や核兵器禁止条約の広がりなどにみられる、人道的見地から核軍縮を追求する世界の流れに逆行する態度です。
運動の発展こそ
最終日、少なからぬ国がドー・フン・ビエット議長の合意形成の努力を評価しました。ただ、議長は閉会後の記者会見で、コンセンサスへの政治的意思はあったが「それをもってしても、ゴール(文書採択)を突き抜けることはできなかった」と述べました。第6条をはじめとする根幹の問題での、核兵器国の背信と妨害が、「ゴール」への勢いをそいだのです。
今回、成果文書を採択できなかったものの、核兵器廃絶こそ世界の本流であることがあらためて示されました。後退した文書が採択されることもありませんでした。そして、核兵器に固執する勢力とのたたかいがいっそう重要になっていることが鮮明になりました。被爆者を先頭とする運動の発展が求められます。(川田忠明・党平和運動局長、国際委員会事務局次長)

