参院で審議中の健康保険法改定案は、「一部保険外療養」の創設という、日本の公的医療保険の大原則を覆しかねない重大問題を含みます。衆院で反対した主な政党は日本共産党だけですが、このまま通すわけにはいきません。
直面するのは、解熱・鎮痛剤のロキソニンや花粉症薬のアレグラなど、同等・類似の市販薬がある薬(OTC類似薬)を処方された場合に、薬剤費の一部を保険から外して全額患者負担とし、患者の負担を大幅に増やすことです。70歳未満の場合、3割だった自己負担が約5割になります。
今回、保険から外される部分は4分の1ですが、日本共産党の辰巳孝太郎議員の質問に上野賢一郎厚労相は、全額患者負担にすることも可能だと認めています。(4月24日、衆院厚労委)
■診察にも拡大可能
重大なのは、これが「一部保険外療養」として制度化され、今後、薬剤費だけでなく診察、処置、手術、検査、入院時の看護などにも持ち込まれかねないことです。
「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」というのが、厚労省自身が認め、2004年の厚労相と規制改革担当相の「基本的合意」にも明記された医療保険の大原則です。
ところが、今回の法改定では、医者が必要かつ適切だと判断して処方する薬を、市販薬があるという理由で一部を保険から外します。
それだけでなく、法案は「(市販薬との)代替性が特に高い薬剤を用いた療養」について、「費用のうち一部を保険給付の対象としない」制度として「一部保険外療養」を創設します。
例えば、▽花粉症と診断されアレグラを処方された▽発熱などの症状で受診し風邪と診断され解熱剤のロキソニンを処方された―などの場合に、薬代の一部が保険外になるだけでなく、診察代も一部保険外になる危険があります。しかも、「一部保険外療養」の対象は国会に諮らず厚労省が決め、拡大できます。
■国民皆保険を崩す
日本共産党の白川容子議員の質問に対し厚労省は、診察・処置・検査など薬剤費以外への拡大について、法の規定からして可能だと認めました。(21日、参院厚労委)
日本の医療保険では、保険がきく医療ときかない医療の併用は原則禁止されています。例外的に認められているのが、差額ベッド代や、患者の希望で後発(ジェネリック)医薬品でなく先発薬を使うなど、患者の選択による「選定療養」です。
これらは、医師が医療上の必要があると判断すれば全額保険が適用されます。ところが、「一部保険外療養」は、医師が必要と判断した療養でも強引に保険から外すものです。これまでの考え方と一線を画します。必要な医療は保険でカバーするという国民皆保険の理念を揺るがす大転換です。
将来、風邪や鼻炎など政府が「軽い病気」「市販薬ですむ」と考える傷病の診察や検査に拡大され、国民皆保険を崩す突破口となる恐れがあります。廃案にしなければなりません。

