介護保険のサービス基盤は崩壊危機にあります。本紙が告発してきた通り、全国の市町村の2割超の自治体で、訪問介護事業所が「ゼロ」か「残り1カ所」しかない異常事態です。立て直しは喫緊の課題です。ところが、26日にも衆院通過が狙われる介護保険法改定案は、崩壊と格差を追認し、全国一律の給付という社会保険の原則を破壊する歴史的改悪を含んでいます。
■人員基準を緩める
大きな問題は、創設される「特定地域サービス」です。高齢者人口が減少する地域を都道府県が「特定地域」に定めれば、在宅介護サービスや介護施設の管理者や専門職、常勤・専従要件、夜勤要件など人員配置基準が緩和されます。介護報酬に月単位の定額制を導入し、事業者の選択制にします。
基準緩和は人手不足で事業継続に苦しむ地域への「配慮」のように見えますが、問題の解決にはなりません。中山間地などで事業所が次々撤退している最大の要因は、全産業平均より月8万円低い低賃金による人手不足、その大本の低い介護報酬にあります。
賃金水準の引き上げを怠ったまま配置基準だけを緩和すれば、少ない人員にさらなる過重労働を強いる結果を招き離職者が増え、遠からず現場は完全に破綻します。
国は、定額制の導入で、ヘルパーの移動時間を考慮した報酬設定が可能とします。しかし、低い介護報酬のまま定額にすれば利用者は必要なサービスを削られます。
市町村の一部エリアを「特定地域」に定めることを可能としていることも重大です。大都市部でも高齢人口が減少している一部地域で可能になり、広範に広がる危険があります。障害福祉でも同「サービス」を創設します。
■要介護5でも外す
看過できないのは、「特定地域居宅サービス等事業」の創設です。民間事業者が撤退し、前述の基準緩和サービスすら提供できない「訪問介護ゼロ・1」のような過疎地域において、要介護1~5の認定者に対する在宅サービスを保険給付から外し、市町村が行う「地域支援事業」へ移行させるというものです。介護保険の財源を使います。
地域支援事業は、必要に応じて支払われる義務的給付(保険給付)と異なり、毎年度、予算上限の制約を受けます。実際、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会意見書は、「上限額」設定に言及しています。
衆院の参考人質疑では「給付の権利を外し、社会保険の原則を破壊する」「地域でサービスが違うのは保険としてあってはならない」として、要介護や要支援の人に必要な保険給付を行うとした同法違反を指摘する声も出ました。
住宅型有料老人ホームの入居者を対象とするケアプラン作成に1~3割の自己負担を導入するのも、ケアプラン全般の有料化への突破口です。 危機打開には介護保険への国庫負担割合を10%(1・3兆円)増やし、職員の賃金を全産業平均並みに引き上げ、介護事業が消失危機にある自治体に国費で財政支援を行うことです。大株主・大企業の応分の負担で実現可能です。

