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2026年5月21日

主張

アイヌ新法の改正
民族と多文化を尊重すること

 国連の「先住民族に関する権利宣言」(2007年)を契機に、言語、文化、雇用、教育など先住民族の権利回復が世界の流れとなっています。日本でも、長年の闘いの成果として、アイヌ民族を「先住民族」と初めて明記したアイヌ施策推進法(アイヌ新法)が19年に施行され、多文化尊重社会実現への第一歩とされました。

 しかし、アイヌ民族への政府の謝罪、回復すべき先住権(自決権、土地権、生業〈なりわい〉の権利など)の明記、アイヌヘイトを規制する条項がなく、国際水準に照らして弱点を残しています。

 高市早苗政権は昨年末、アイヌ新法施行5年後の見直しで改正を見送るという結論を出しました。今からでも、アイヌの団体や個人の意見・要望に寄り添った改正をすべきです。

■横行した人種主義

 今年に入ってからも、先住権の中核をなす遺骨返還問題が再浮上しました。

 なぜ、各民族の人骨研究が世界的に行われてきたのか。

 文化を手がかりにして人間について考える学問・文化人類学は19世紀に産声をあげ、20世紀中葉まで、人種主義や植民地主義と密接な関わりをもっていました。人種主義とは、ダーウィンの「進化論」を人間に当てはめ、西欧人を頂点に、それ以外の民族を進化の途中の人種とみる考えで、今日では、間違った人種・民族差別の思想です。

 この世界的すう勢のもと、1869年の「北海道」制定以降、東京大学の小金井良精(よしきよ)や北海道大学の児玉作左衛門ら研究者がアイヌ遺骨を大量に盗掘しました。1930年代に、人種や民族には優劣があるという優生思想を説く「日本民族衛生学会」などが設立され、アイヌだけでなく、日本の植民地支配の拡大にあわせるように、中国大陸やミクロネシアなどの民族研究に広がった歴史があります。

■先祖の骨は地元に

 大学などが所有するアイヌの遺骨は、アイヌ新法施行と同時に北海道白老町に建てられた国立・民族共生象徴空間(ウポポイ)の「慰霊施設」に集約・保管されています。

 東大など9大学から個体を特定できた遺骨1300体と特定できなかった遺骨282箱です。ドイツやイギリスの博物館や大学からも返還が相次ぎ、遺骨7体を保管しています。しかし、アイヌの人からは「『人は土から生まれて土に還(かえ)る』が教えです。『慰霊施設』はコンクリートの空間なので、尊厳はない」との批判が出ていました。

 今月8日、北海道日高地方の静内川(シベチャリ川)流域に暮らすアイヌの団体・シベチャリアイヌトライブは国を相手に、自分たちが暮らす土地から持ち去られ、「慰霊施設」にある279体の遺骨と埋葬品の返還を求めて札幌地裁に提訴しました。

 提訴にあたって「先祖の骨は地元に返してもらって、故郷の土に埋葬する。先祖と共に生活すること、先住権を取り戻すことはアイヌとしての大きな課題だ」と訴えています。

 政府はアイヌの文化を尊重し、アイヌの人たちの要望に沿うよう解決すべきです。