大学の研究成果が、人命を奪う兵器開発に利用される危険が高まっています。
高市早苗政権は4月21日の閣議決定で、武器輸出を原則解禁にして、紛争当事国への殺傷兵器の輸出を可能にしました。第7期科学技術・イノベーション基本計画(3月27日閣議決定)は、科学技術を「国家安全保障上の目標を達成するための不可欠な基盤」と位置づけ、軍産学官連携の強化で軍需産業を成長分野に押し上げようとしています。
■巨額の資金で誘導
そのカギを握るのは、最先端の研究者の兵器開発への参画です。そのために導入されたのが防衛省の安全保障技術研究推進制度です。軍民両用(デュアルユース)研究を推進するとして、防衛省が設定した研究テーマに対応した研究を、巨額の資金をつけて研究者に行わせる制度です。
戦前の反省から軍事研究を行わないと宣言してきた日本学術会議が、2017年の「声明」で慎重な対応を求めたため、大学からの応募は年10件程度にとどまっていました。防衛省は研究者の懸念を払うために「研究の自主性・自律性は尊重される。研究の公開性も担保される」と応募要領を改定しました。
1件当たり最大20億円の支援が受けられる同制度は、大学予算が減り続ける中で、研究者を軍事研究へと誘導するものとなりました。昨年の大学からの応募は123件に急増し、採択は31大学、のべ55件に広がっています。大学からの応募がさらに拡大するなら、同制度の予算が拡充され軍民両用研究が大学に広く導入される危険があります。
防衛省は、防衛だけでなく民生目的の研究を支援するものだと強調しますが、真の目的は兵器開発につなげることです。研究成果の利用を国が求めた場合、研究者は無償で認めなければならず、米国など外国の機関や軍需産業による利用も拒否できません。
■「死の商人」支える
武器輸出が解禁された下では「死の商人国家」を支える制度だと言わざるを得ません。応募締め切りが今月20日に迫っていますが、大学は応募を認めるべきではありません。
第7期基本計画が、この制度に大学の研究者が躊躇(ちゅうちょ)なく参画できるよう各省庁が周知・理解増進に取り組むことを求めているのは重大です。文部科学省が、大学教職員、院生・学生に軍事研究を押し付けるのは、憲法と教育基本法の精神に反するものです。
一方、基本計画は、「もはやノーベル賞は生まれなくなる」と研究力低下に危機感をあらわにしています。00年以降の自然科学系の日本のノーベル賞受賞者数は米国に次ぐ2番目ですが、その研究は1970~90年代のものです。
公的機関の研究開発費は1980年から2000年までは2・3倍に増え、研究者の自由な発想に基づく多様な研究が支えられていました。ところがそれ以降は、国立大学の運営費交付金が13%削減されるなど、基礎研究を支える土台が崩されています。
大学は大きな岐路にあります。軍事研究の押し付けをきっぱり拒否し、大学の基盤的経費の拡充を求める運動が急務です。

