がんなど、さまざまな健康被害が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)の高濃度汚染が、米軍基地や自衛隊基地、半導体工場周辺の河川や土壌から確認され、社会問題になっています。
排出者の責任が問われず、政府が規制してこなかった責任は重大です。国に規制と対策を求める動きは活発で、21日には、「PFAS全国連絡会(仮称)」が結成されます。各地の住民運動を“学習し、交流し、行動する”を合言葉に、PFAS対策の予算確保を要望する活動などを進めるといいます。
■欧米に遅れた基準
PFASは水や油をはじき、熱に強いため、フライパン、消火剤、半導体の製造、エアコンの冷媒(空気中の熱を取り除く)など広範に使われています。自然界でほとんど分解されず「永遠の化学物質」とも呼ばれていますが、体内に長く蓄積することから、世界的に大きな環境問題となっています。
人への有害影響として、免疫力の低下やコレステロール上昇、乳がんや腎臓がんのリスク増加などが指摘され、欧米などでは厳しい規制が行われています。欧州連合(EU)では1万種類以上あるといわれるPFAS全体を規制する動きが出ています。
一方、日本国内の規制は、PFASのうち、ストックホルム条約(POPs条約)で製造・使用が禁止されているPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)、PFHxS(ヘキサエス)だけで、対応の遅れが際立っています。
国は4月から、水道水の水質基準項目にPFOSとPFOAを追加しました。しかし、環境省が設定した基準値は、PFOSとPFOA合計の濃度で1リットル当たり50ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)です。欧米に比べてきわめて緩い基準です。住民運動団体からは「何十年も飲み続ける水として安心できる水準なのか」と見直しを求める声が上がっています。
■予防原則の立場で
国は、「科学的知見がまだ十分ではない」との口実で、規制に後ろ向きです。大事なのは、予防原則にたった規制強化です。環境や人への重大な影響が懸念される場合は、科学的な因果関係が完全に証明されていなくても、予防的な措置を講じるべきです。
今年は、1956年に水俣病が「公式確認」されてから70年です。
水俣病は、チッソ水俣工場が海に流した排水に含まれていた有機水銀が魚介類に蓄積し、それらを食べた住民らに重い神経性疾患を引き起こした「公害」です。水俣病の原因が排水とわかってからもチッソは垂れ流しをやめず、国は68年にやっと規制しました。
水俣病をいま教訓にし、排出者責任と国の責任を明確にして欧米並みの規制と健康調査に国が乗り出すことです。PFASを製造、販売、使用している事業者は、少なくとも43都道府県、200超の自治体に所在しています。適正に管理されているか、国の責任で調査すべきです。
国は、米軍基地内への立ち入り調査を要求し、土壌や農作物など各地の汚染状況と汚染源の調査も行うべきです。

