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2026年5月13日

主張

IOC遺伝子検査
人権・多様性踏まえた公平さを

 国際オリンピック委員会(IOC)は、2028年ロサンゼルス五輪からすべての女子選手に性別確認の遺伝子検査を義務付けると公表しました。ここには見過ごせない多くの問題があります。

 IOCは女子種目の「公平性、安全性」確保のため、「生物学的な女性」の参加に限定するとしています。これによって女性に性別変更したトランスジェンダー(TG)や性分化疾患(DSD)の選手が実質的に締め出されることになります。

 五輪憲章には、性別や性的指向などいかなる差別も許さないとの規定があり、今回の方針はその理念に反します。国連人権理事会や、160を超える人権やスポーツ団体の共同声明で「計画を撤回すべき」だと厳しい批判が上がっているのは当然です。

■生物学的性は複雑

 TGやDSDの選手が競技で優位性を持つとの議論はあります。ただ、その優位性は科学的に証明されていません。

 IOCは21年、こうした選手を排除せず、包摂するあり方を「公平で、包括的、そして性自認や性の多様性に基づく差別のない枠組み」として示していました。

 この下で、トライアスロンなど一部の競技では、TG女性の選手らがどう参加していけるか、対話や検証、合意形成などを大事にしながら、排除のない実践が始まっていました。

 IOCの新方針は、運動能力や筋力の違いを男性型の遺伝子(SRY遺伝子)の有無に求めるものです。しかし、人間の生物学的性は単一の遺伝子だけでは決まりません。他の遺伝子や染色体、性腺、性ホルモン、発達過程などの相互作用によるとされています。さらにSRY遺伝子の存在が、すべての競技で絶対的な優位性をもたらすという根拠も示されてはいません。

■国際的到達に立ち

 遺伝子検査の義務づけは、生物・医学の応用において人権と尊厳を保護するためのオビエド条約など複数の国際条約や各国の法制度と深刻な矛盾をきたします。遺伝子情報は究極の個人情報で、医療目的以外の収集、利用には厳格な制限があります。競技参加のための検査は明確な目的外となります。

 これらの個人データが流出すれば、選手の将来と家族にまで重大なプライバシー侵害をもたらす危険があります。競技参加の有無が個人情報の可視化になりかねず、検査で性自認と異なった際の選手の精神的な負担は重大で、人格否定になる恐れもあります。人権侵害のリスクを女子選手だけに負わせることは差別的と言わざるを得ません。

 背景には28年の五輪開催地である米国のトランプ大統領の存在があります。TG女性のスポーツ参加禁止の大統領令に署名し、IOCにも圧力をかけてきたからです。

 IOCは自主的な立場でこの問題を再検討すべきです。遺伝子情報の扱いは国際的な問題だけに拙速を避け、生命倫理や人権などの到達にのっとった対応が求められます。国境を超えて競い合う五輪にふさわしく、排除ではなく「多様性を踏まえた公平」の探求こそ求められています。